三沢光晴夫人ら被害は「1億円超」…プロレスリング・ノアを襲った“巨額詐欺事件”の手口は? 急逝「昭和プロレスの語り部」が明かした“ノア崩壊”ウラ話
国際プロレスや全日本プロレスで活躍した元プロレスラー・マイティ井上(本名・井上末雄)さんが11月27日、神戸市内の病院で死去した。75歳だった。いまでは数少なくなった昭和プロレス史を知る名レスラーが、生前語っていたプロレス界を揺るがせた大事件の内幕とは? 《NumberWebノンフィクション全2回の2回目/最初から読む》 【写真】「ウソだろ…110kgの巨体が上空から!」マイティ井上の代名詞で超高難度技“サマーソルト・ドロップ”はいまでもファンの語り草に…当時の貴重写真を見る(30枚超) プロレスラー・三沢光晴(享年46)がリング禍に見舞われたのはいまから15年前、2009年のことであった。 戦後のプロレス史にその名を刻んだレジェンドの急死は業界に大きな衝撃をもたらしたが、三沢が創設した団体「プロレスリング・ノア」はその数年前から経営不振が表面化しており、日本テレビ系列による「地上波中継打ち切り」の衝撃とあいまって、団体は人的リストラを余儀なくされていた。 そのリストラ第一弾が、レフェリーだったマイティ井上さん、そして泉田純、本田多聞、菊地毅、川畑輝鎮、橋誠といった中堅、ベテラン選手たちだった。 すでに還暦を迎えようとしていた井上さんは、自身のリストラを受け入れる一方、解雇通告を受けた選手たちの進路相談にも乗っており、そのうちの1人が泉田だった。
経営不振のノアを襲った「巨額詐欺事件」
その時期と前後して、ノアの周辺には「救世主」と目されていた太いタニマチが出現していた。「謎の小田原夫婦」こと、神奈川県・小田原市に住むN氏とその妻(N夫人)である。 N氏は稲川会系の組長代行もつとめた元暴力団幹部で、もとはノアの取締役をつとめていた永源遙(故人)の知人だった。そして一見、地味な中年女性に見えた妻のN夫人。その正体は、ヤクザも驚く名うての「プロ詐欺師」だったのである。 後に分かったことだが、N夫人は徳島県や京都府など、全国のお年寄りから総額16億円以上もの金銭をだまし取っており、その金を自身の遊興費や、ノアの若手選手をはべらせる「タニマチ遊び」に使っていた。 この「詐欺師夫人」に目をつけられ、被害者となってしまったのが三沢光晴夫人と泉田である。夫人は三沢の死亡保険金約5200万円、泉田に至っては約8800万円という巨額のカネをN夫人にだまし取られた。 N夫人の必殺技は「口座凍結詐欺」だった。 「恥ずかしい話だけど私、相続税を滞納しちゃったのね。私の資産20億円が入っている口座が、国税の奴らに凍結されちゃったのよ。イズさん、お願い。たった1週間でいいから4000万円、貸してくれない? 口座が解除されたら即時、4000万円はお返ししたうえで、イズさんには小田原のレストランから毎月70万円のお給料を払います」 当時の泉田は、リストラ通告によって心のなかに霧が立ち込めている状態だった。結婚願望があるにもかかわらず、明るい未来はまったく見えない。そこで今後の生活の保障をしてくれると約束したN夫人の虚言を愚かにも信じ、預貯金や親類からの借金、株や愛車ハリアーまで売却、4000万円を工面して送金してしまった。 ところが1週間後、N夫人から返ってきた言葉は意外なものだった。 「イズさん、お金の件だけど国税があと4000万円、必要だっていうの。そのお金がないと、もう最初の4000万円は返せないかも……」
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