黄砂はなぜ春に起こる? 「微生物の箱船」との指摘も
黄砂(こうさ)は古くから東アジア各地で知られる気象現象だ。中国や韓国の紀元前の歴史書、日本の江戸時代の文献などにも関連する記述があり、春の風物詩“春がすみ”や“おぼろ月”も黄砂による現象ではないかという。英語では「アジアン・ダスト」(Asian dust)と呼ばれる黄砂は、1年のうちでもこれから3~5月がピークだ。近年の研究では、花粉症などのアレルギーや呼吸器系の疾患との関連が指摘され、黄砂粒子に大気汚染物質や病原微生物も付着していることが明らかになるなど、もはや“風流”を通り越して、事態は深刻だ。
発生のメカニズムは?
気象庁や環境省などによると、黄砂が起きるのは、中国大陸内陸部にあるゴビ砂漠やタクラマカン砂漠、黄土高原の砂塵(さじん)が強風によって大気中に舞い上げられ、それが上空の偏西風によって運ばれながら地上に降下するからだ。春に発生が多いのは、冬の間シベリア高気圧の影響で風が弱く、降雪にもおおわれていた同地域が、春になって高気圧の勢力が弱まり、低気圧が発達しながら強風を伴い相次いで通過するためだ。夏以降は植物が多く、雨も降るようになるため、黄砂は少なくなる。 大気中に舞い上がった黄砂粒子のうち、粒径が10マイクロメートル(1マイクロメートルは1ミリメートルの1000分の1)以上の比較的大きな粒は重力によってすぐに落ちるが、それよりも小さな黄砂の粒子は、偏西風によって遠くまで運ばれる。中央アジア起源の黄砂粒子が太平洋を横断し、北米大陸やグリーンランド、さらには欧州アルプスまで到達したとの報告もある。
アレルギーや呼吸器疾患との関連も
これらの黄砂の粒子には、石英や長石などの岩石の鉱物や、雲母や緑泥石などの粘土鉱物が多く含まれ、全体の62%は二酸化ケイ素(SiO2)が成分だ。二酸化ケイ素にはアレルギー反応を高める作用があり、黄砂現象の発生時には、花粉症や気管支ぜん息の症状が悪化し、小児ぜん息で入院するリスクが高くなる。