松山英樹の「ZXiドライバー」選び 本命は「LS」4機種の評価は?/駐在レップの米ツアー東奔西走Vol.7
もちろん本人が完璧と思うものがいきなりできるわけではなく、初日のラウンドを終えてからも、練習場に上がってきて調整を行いました。ヘッド内部に入れる重量、重心、フィーリング調整用のジェル(おもり) の位置をいじるだけでなく、ウエートの前後の配分なども調整。スリーブの角度などもちょっとずつ動かしながら、前のドライバーのフィーリングに近づけるようにアレンジしていきました。 最終戦の4日間は新「LS」で戦いましたが、その後の「プレジデンツカップ」では、スコッティ・シェフラーとのエース対決の際に、元のドライバー(ZX5 MkII LS)に戻しました。オリンピックの銅メダルもセントジュードで勝ったのも、元エースヘッドでしたから、ひとまずクラブを戻すという判断でした。実際それで抜群なゴルフをしてシェフラーに打ち勝ちましたからね。「ZOZOチャンピオンシップ」はそのままのクラブでいってほしいと思ったので、習志野ではテストらしいテストはしませんでした。
なぜ「LS」?⇒前に行く感じがちょうど良かった
ご存じかと思いますが、「ZXiシリーズ」は、「ZXi」「-MAX」「-LS」「-TR」の4機種があります。その中で松山プロが「LS」を選んだのはなぜか。今回のドライバーは、ボクの印象だとどの機種も「球が上がりやすい」というのがひとつあります。アマチュアにとって「上がる」はかなりポジティブですが、プロにとっては「上がる」ことで、理想とする弾道の高さから外れることもある。テストしていて感じるのは、今回のヘッドは時に“上がりすぎる雰囲気”があるということ。スタンダードモデルは松山プロにとっては球が上がりすぎで、スピンがほどよく落ちてちょっと前に行く「LS」の感じが、ちょうど良かったんですね。
では、新「LS」で完璧に合うものができたかというと、そこは今まで戦ってきた信頼する前作「ZX5 MkII LS」がありますから、それを超えるものをすぐに用意するのは難しい。松山プロが気になったのはやはり「球の高さ」について。「LS」だとしても「球が高く出てつかまりやすい」という傾向があったので、その細かい部分での調整が必要でした。試合を戦う中で、普段“歯を食いしばって”弾道を作ってコースをねじ伏せる松山プロにとっては、ほんのちょっとの球の高さの違いが死活問題になりますからね。 11月に出場した「ダンロップフェニックス」でも、練習日に「LS」のヘッドでいくつか調整して、いいものが見つかりかけました。でも、「こうしたらいいんじゃないか」っていう仮説を立てて進めていた施策が、練習日にコースで打っていると、「やっていた狙いだと怖い部分がある」と不安がでてきました。やはり松山プロはいろんな球を打つ選手。本人がとあるホールで、「ただ真っすぐ打つだけならこのセッティングは最高です。でも曲げるときにちょっと…」と、ティショットを打った後にこちらを振り向いて言ってきました。 彼は試合中にほんといろんなことをやりますから、ティショットでの球の打ち分けはザラ。例えば4種類の球を打ち分けるとして、4つのうち1つでも不安があると、そのヘッドは試合で投入しません。松山プロ本人もフェニックスは勝ちにいっていたと思いますし、ゴルフ場の狭さ(コースの松林)からすると、新ドライバーでは不安の要素が大きくなり、結局前のドライバーを使うことになりました。