人気キャラ〝血小板ちゃん〟巡る実写化秘話も 映画「はたらく細胞」監督「健康診断の結果、わかるように」
「会社員監督」でアカデミー賞
――2022年にフジテレビを退社されるまで、会社員だったというのもユニークな経歴だと感じます。 会社員時代は自分の仕事を選べないじゃないですか。「どんな球が来ても打たなきゃいけない」という環境でやってきました。 ずっとドラマをやっていたから、もう何百時間、ヘタしたら何千時間も撮影しているんですよ。撮影時間が長いから、いっぱいミスもしている。そうすると、「あっ、こういうことをすると怪我をするんだ」とか、逆に「こうすると感動するんだ」というツボはやっぱり、知っているというか。 そういうツボのサンプルを引き出しながら、無茶振りにも応えてきましたね。だから、難しい球はもちろん、打つのは難しいんだけど、打てた時の快感がね、大きいので。 ――長く演出に携わられましたが、映画のメガホンを初めて取ったのは2009年公開の「のだめ」劇場版のとき、40代になってからと伺っています。 「のだめ」は元々連続ドラマがあって、スペシャルの長編ドラマがあって、映画になっているから、意外とスムーズに、ドラマから映画にスライドできたとは感じています。テレビがヒットして、そのまま映画になっていったという流れだったので。劇的に変わったというよりも「気がついたら映画を撮っているぞ」という感じでした。 ――今回の『はたらく細胞』のテーマには「組織の中での自分の役割を果たすこと」もあると感じました。会社員としての経験も生かされているでしょうか。 そうですね。作中で赤血球や白血球は自分に任されたさまざまな仕事をして、時には困難にも直面します。このように、“はたらく”というのは、社会を構成する人、ある意味では地球上の誰でも同じ共感を得られるテーマだと思います。 そんな70億人全員の中に、さらに37兆個の細胞が働いている。そんなことに思いを馳せてみると、ちょっと大変なことがあっても、頑張れるのではないでしょうか。 ――原作ファンでない人も、原作ファンの人も、この映画のどんなところを観てほしいですか? この映画のキャッチコピーが「笑って泣けてタメになる」なんですね。この三つが合わさることはなかなかないと思います。この映画をぜひ劇場で観ていただいて、それをきっかけに、自分の身体を愛してほしいと思います。