人気キャラ〝血小板ちゃん〟巡る実写化秘話も 映画「はたらく細胞」監督「健康診断の結果、わかるように」
原作にない「人間」登場の理由
――本作では、原作にはない、細胞たちの主である人間側のドラマも描かれていました。なぜですか? 原作のこだわりは、やっぱり「人間の中だけ」というところだと思うので、人間側を描くのはある意味で禁じ手でもあると思います。 現実的な事情もあって、すべてを体内だけで描こうとすると、それこそセットやCGとかに、どうしても予算が足りなかったんです。コスト的な意味もあって、実は体の外のドラマのスケールはわざと小さくしています。 あえてそこにギャップを出すことによって、体内のスケールを大きく見せる。でも、原作にない要素を足したのに、そこがちゃんと成立していなければ、原作のファンの方も納得いただけないでしょう。そこは阿部サダヲさんと芦田愛菜さんがしっかり演じ切ってくれました。 ――「のだめカンタービレ」シリーズなど、原作ファンからも愛されるような実写化に定評があります。心がけていることはありますか? まずは、自分が原作ファンになることですね。あとは、最初に実際に原作のファンの方に会って、取材するというのはいつもしています。そうすると、イメージと違うことがよくあるんですよ。 例えば、「どのキャラクターが好きですか?」と質問すると、よく知らないと赤血球とか白血球とか、主人公的なキャラが人気なのかと思ってしまうけど、違う。「血小板ちゃん」を挙げる人が多くて。 血小板ちゃんは原作では小さい女の子で、保育園児のようなビジュアルですが、実は実写化にあたり、違うアプローチをしようとしていました。でも、「ここはちゃんと忠実に子どもでやらなきゃダメなところだ」「ここを外すと原作ファンが離れてしまうぞ」と。製作陣が独断的にすると、やっぱり痛い目に遭うことがあるので。 ――逆に、本作では原作に忠実なシーンも多いように感じました。原作ファンが好きなエピソードというか。 やっぱり、映画の導入で違うことをやっちゃうと、原作を知っている人はすごくガクッとなっちゃって、入っていけないから。印象に残っているシーンで、まず安心していただくことが大事だと思っています。 最初の方で「あっ、これは大丈夫だ」ってわかってもらうというか。で、そこからどんどんこちら側に引きずり込んでいく(笑)。