人気キャラ〝血小板ちゃん〟巡る実写化秘話も 映画「はたらく細胞」監督「健康診断の結果、わかるように」
体内で働く赤血球や白血球、血小板といった細胞を擬人化し、くしゃみや感染症など、体のメカニズムに沿ったストーリーで人気のマンガ『はたらく細胞』。その実写映画化が発表されると、大きな注目を集めました。手がけるのはこれまで「テルマエ・ロマエ」や「翔んで埼玉」など、実写化が難しい作品を世に送り出し、原作ファンからも評価されてきた武内英樹監督。今回の「細胞を人が演じる」という世界観を、どのように映画として成立させたのでしょうか。制作を通じた監督自身の変化や、人気キャラの実写化秘話とあわせて、話を聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎) 【画像】人気キャラ“血小板ちゃん”実写化でこうなった 映画「はたらく細胞」シーン集 【プロフィール】武内英樹(たけうち・ひでき) 1966年生まれ、千葉県出身。1990年にフジテレビ入社。制作部でテレビドラマ「神様、もう少しだけ」「カバチタレ!」「電車男」「のだめカンタービレ」シリーズなどでドラマの演出を務める。「のだめカンタービレ」の劇場版「のだめカンタービレ 最終楽章 前編・後編」で初のメガホンを取り、以降「テルマエ・ロマエ」シリーズなどで映画監督としてもキャリアを重ね、2019年公開の「翔んで埼玉」で第43回日本アカデミー賞の最優秀監督賞を受賞した。2022年にフジテレビ退社。最新作「はたらく細胞」が12月13日に公開予定。
「ミクロだけど、壮大な世界」
――原作シリーズのさまざまな要素が作中に散りばめられていました。相当、原作を読み込まれたのではないでしょうか。 かなり読みましたね。詳しくなりましたよ。今まで血液検査を受けて、結果の紙に「白血球」「抗体」と書かれていても、それが何か、値が高いとどうなるかもよくわからなかったんだけど、可視化してビジュアルにすることで「体の中でこういう働きをしているんだ」「これが戦ってくれているんだ」とスッと頭に入ってきた。 今回の作品では、それを人が演じることで、さらに感情移入できたり、理解しやすくなったりすると思います。子どもが見て、将来「お医者さんになりたい」「看護師さんになりたい」とか、そういう目覚めにもなるんじゃないでしょうか。 ――「細胞を人が演じる」のはかなり難しいのではないかと思っていたのですが、細胞側のドラマとSF的な表現、アクションシーンに違和感がなく、驚きました。 いやもう、怖いですよね。撮影中「どうなるか」は私も感覚でしかないので、頭の中でカットバック(別々の場面を交互に見せる編集の手法)していって。 体内ってミクロだけど、壮大なんだということを伝えるためにも、数やスケール感というのはしっかり出さなきゃいけない。エキストラも総勢約7500人とか、たくさん出演してもらって、それをドローンを飛ばして空から撮って。爆破もガンガンして。 あとは、体の中のカラフルなイメージを反映しつつ、各臓器の機能が伝わりやすいようなセットやCGを駆使しました。 赤血球役の永野芽郁さんは「赤血球を演じる」というオファーを受けて、マネージャーさんに「どういうこと?」って聞いたみたいですけどね。アクションシーンは白血球(好中球)役の佐藤健さんがこだわって、映画『るろうに剣心』などのアクション監督の大内貴仁さんと一緒に作っていきました。 ――日本人俳優の阿部寛さんが古代ローマ帝国の浴場設計師を演じる「テルマエ・ロマエ」、未開の地の埼玉県民が徹底的に差別されている架空の日本を描く「翔んで埼玉」を撮ってきた武内監督でも、怖いと感じるんですね。頭の中のイメージが、必ずしも反映できないこともありますか? それはもちろん、ありますよ。予算的にできないこともあるし、例えば「イメージ通りの場所がない」とかそういうことも起きます。それでも何とかイメージに近いもの、違和感のない代わりのもので実現するしかない。毎回、疲れちゃいますよね(笑)。 今回は映画会社さんの方から企画を提案していただいたんですが、周囲からはいつも大体「無理だ」って言われます。