校庭の土俵と丘から観た夜景 姿は変えても「故郷」だ 双日・藤本昌義会長
日本を代表する企業や組織のトップで活躍する人たちが歩んできた道のり、ビジネスパーソンとしての「源流」を探ります。前回に引き続き双日・藤本昌義会長が登場し、「源流」である、幼少期に通った小学校、中学校、高校の計8校を訪れた。 【写真】双日・藤本昌義会長はこちら * * * 「転」の字には、転ぶとか転がるといった負の意味に加えて、方向を変える、変化するという正の意味もあり、人生につながる重みを感じさせる。子どもにとって「転居」や「転校」となると、知らない土地で初めて会う面々という「未知の世界」との遭遇をもたらし、苦痛になる場合もあるが、予想を超えた楽しさも生む。 いまでは父が転勤しても、子どもの転校を避けて単身赴任とする例が圧倒的に多いが、かつては「家長」と呼ばれた父が異動で転居すれば、子どもたちも母とともに移り住み、通う学校を替えた。どちらが正しいかではなく、「転」が生んだ経験が力となることもある。 企業などのトップには、それぞれの歩んだ道がある。振り返れば、その歩みの始まりが、どこかにある。忘れたことはない故郷、一つになって暮らした家族、様々なことを学んだ学校、仕事とは何かを教えてくれた最初の上司、初めて訪れた外国。それらを、ここでは『源流』と呼ぶ。 11月下旬、藤本昌義さんが父の転勤に伴って通った小学校、中学校、高校の計8校のうち4校を、連載の企画で一緒に訪ねた。「未知」の世界へ溶け込んで、友だちら人脈を築いていく体験が、ビジネスパーソンとしての『源流』を生んだ地だ。 「勧功興学」──佐賀市立勧興小学校の校舎に入ると、中国の古典「五経」の一つ『礼記』にある校名を生んだ言葉が、掲げてある。江戸時代に鍋島藩が設けた藩校「弘道館」で『礼記』が教科書に使われていて、「勧興」の名が付いた。1年生の2学期から6年生の1学期まで、5年近くいた。八つ通った学校で最長の在校で、福岡市の小学校へ転校した1969年7月以来55年ぶりの再訪だ。