メディアでの露出度は高い路線バスの旅……リアルでイマイチ流行らないのは「荷物」のせいだと?
■バスのほうが居場所を選ぶ
とりわけ、最近の主流である2000年代後半から普及し始めた、バリアフリー対応のいわゆる標準仕様ノンステップ車と、キャスター付き荷物との相性が、どうしてこうなっちゃったの?と首を傾げたくなるほど本当によろしくない。 車両の前~中扉あたりまでのバリアフリー対応エリアの床面なら、何とかキャリーケースを置いておく余地はなくもない。 しかし、バリアフリーエリアよりも後ろや、バスを扱ったテレビ番組等でおなじみの最後部の横長座席(通称ワルシート)となると、脚と前の背もたれの間にケースを挟めるほどシートピッチに余裕がなく、シート間の床面が凸凹。 通路もバリアフリーエリアに比べると極端に狭くなるので、常に置いておくと憚りを感じる上、ケースが転がったり倒れたりしないよう監視の目を欠かせず、気が休まらないハズ。 以前、50kmほどの距離を走るローカル路線バスで、大きなキャリーケースを持ったお兄さんが途中から乗車するも、ちょうどバリアフリーエリアの席が全部埋まっていた。 空いていた非常口座席に座るも上記の通路の問題がリアルタイムで浮き彫りになって、やむを得ずキャリーケースをシートに押し込むも非常に不安定。 所要時間が長いため寝ようにも、本人の身体を治具にして、荷物を固定させたままポジションを掴むのに超絶難儀していた様子。 バリアフリーエリアのお客さんが降りていって空きができた後も、場所替えは面倒だったと見えて、最終的には宇宙飛行士のような姿勢で寝ていたのを目の当たりにし、大荷物と路線バスがいかに水と油の関係かを痛感させられてしまった。 荷物の置きやすさに関して言うなら、もしかすると今のバリアフリー標準仕様車よりも、昔のツーステップ車のほうが有利だったかも。なにしろアレ、乗るまでは大変だけれど、一度乗ってしまえば床面フルフラットだもんね。
■バス旅に適した荷物の姿って?
キャリケースを持っているだけで余計な苦労を強いられてしまう点から、公共交通機関の中でも特に一般路線バスのデメリットが目立ってしまうのは否めない。 では、どれくらいの荷物の量だったら、これといった問題もなく路線バスの旅を楽しめるようになるのか。 本当は手ぶらが理想なのであるが、そうも行かないので目安を挙げるとするなら、前述の通り「キャスターなし」が第一条件となり、なおかつ肩掛けストラップ等が付いていて持ち運びしやすいもの。 あとは、車内が混雑したとき簡単に対処できるよう、膝の上に置いて江戸時代の拷問にならないくらいの大きさと重さに調整するのがベターだ。 当方・中山を例にすると、最近は1泊でも10泊でも日数に関係なく、W35cm×H35cm×D14cmのトートバッグ1個に全部収まるようにしている。 出先で対応をする場合が多々あるため、仕事道具一式の携行が必須になり、重量ではカバン約1kg+パソコン関係約2kg+その他で合わせて5kg以内、といったところ。膝に乗せると、ちょっと重いかな? 路線バスでの移動にはデメリットを連想しやすいものの、他の公共交通機関と組み合わせると「そこ行けたの?」という場所まで簡単に行けてしまったり、レンタカーを借りた時に必ず背負う交通ルールに対する責任とは無縁になるなど、享受できるメリットもたくさんあり、覚えておいて損のない乗り物であるのは確かだ。