第二次トランプ政権でも中国と“貿易戦争”か 「1錠で命を奪う」アメリカでまん延する“違法薬物”
中国やメキシコなどからの輸入品に追加関税を課すと表明した、アメリカのトランプ次期大統領。「アメリカ第一」を掲げ、就任前から自由貿易に背を向けるが、理由の1つに挙げているのが、これらの国から流入しているとされる違法薬物のまん延だ。「1錠で命を奪う」とも言われる、その実態は…。 (NNNロサンゼルス 岡田光弘)
■アメリカ“違法薬物”の実態
西海岸カリフォルニア州サンフランシスコ。街中を走るケーブルカーやゴールデンゲートブリッジなど、日本人にも人気の観光地だが、街の中心部は今、多くの薬物中毒者であふれている。「毎日、毎日、クソ野郎ばっかりだ!」急にカメラに向かって叫ぶ人。数分間、うつむいたままの人。異様な光景が広がっている。 およそ10年にわたり、この街を見てきたホームレスのビリーさんに話を聞いた。かつてはヘロイン中毒者が多かったと言うが、ここ数年、大きな変化があると指摘する。「身体を折りたたみ、今にも倒れそうな奴ばかりだ。みんな、フェンタニルの過剰摂取だよ」。中腰の姿勢のまま動かない人が多く見られる光景から“ゾンビ・タウン”とも呼ばれる事態となっていた。
■「1錠で命を奪う」合成麻薬フェンタニル
「フェンタニル」は元々、がんの痛みの緩和など医療用に開発された鎮痛薬だ。ヘロインの最大50倍、モルヒネの100倍強力で、その致死量は2ミリグラムとされている。アメリカでは近年、密造されたフェンタニルの錠剤が密売人を通じて違法に売買され、簡単に手に入れられるようになっているという。 アメリカ麻薬取締局によると、2024年に検査した錠剤10錠のうち5錠の割合で致死量のフェンタニルが含まれていた。アメリカ国内では違法薬物により命を落とす人が一日あたり300人近くにのぼり、そのほとんどがフェンタニルの過剰摂取だという。麻薬取締局は「1錠で命を奪う」と注意を呼びかけているが、フェンタニルで命を落とす人は後を絶たず、全米で18歳から45歳の死因の1位となっている。
■中国の原料を輸入しメキシコで密造
こうした合成麻薬フェンタニルのほとんどは中国で原料が作られ、メキシコの麻薬密売組織が合成し、アメリカに密輸しているとみられている。アメリカの国境警備局によると、2023年10月から24年9月までの間に押収したフェンタニルはおよそ10トンで、このうちの97%が南西部のメキシコ国境で押収したものだった。麻薬密売組織は近年、多くの稼ぎを得て力を強めていて、メキシコでの治安悪化の大きな要因となっている。