BYD新型「シール」の日本での勝算は? 辛口モータージャーナリストが中華EVセダンをRWDとAWDとで乗り比べ…意外な結果をお届けします
シールは後輪駆動モデルのほうが順調な売れ行き
さて、BYDシールはすでに欧州にも輸出が開始されており、BEV仕様だけでなくPHEV仕様も用意されている。日本にはBEV仕様だけというのは逆に挑戦的にも思えるが、先に導入された「ATTO 3」や「ドルフィン」と同様、まずはBYDといえばEVという認識が定着するほうがわかりやすい、という面もあるだろう。 そのかわりに、全長4800mm×全幅1875mm×全高1460mmというサイズのDセグメントセダンのBEVで、安全装備も快適装備も充実していて、82.56kWhという大容量の駆動用バッテリーを備えながら、RWD(後輪駆動)モデルで528万円(消費税込)、AWD(4輪駆動)モデルで605万円(消費税込)という価格は、テスラ「モデル3」と比べても抑えられているようには見える。 そこに導入記念キャンペーン特別価格なるものがあり、日本国内先着1000台に限り33万円引というのが当初の価格となる。そもそもDセグメントのセダンは、日本車では新車そのものがほぼ消滅している中で、輸入車、それも大半をドイツプレミアムブランドで保たれている市場になっている。そこでEVを1000台を売ることは決して低いハードルではないと思ったが、正式発売から約1カ月のデータで300台がすでに契約済とのこと。 RWDとAWDの比率は7対3といったところで、通常なら発売直後は高価格モデルから売れていくなか、価格重視で選ばれているとも思える特徴的な売れ方をしている。
RWDのドライバビリティは好感触
ただ、試乗会で乗ってみた限りでは、走りの面でいえば動力性能からハンドリングまでバランスよく仕上がっていると思えたのはRWDのほうで、AWDは、ツインモーターで出力が上乗せされる分、動力性能は当然高く、静止から100km/h域までの発進加速では公表値で3.8秒と、既存エンジン車のスーパーカー並の数値を得られているが、その速さはともかく、前後モーターの出力制御および駆動制御も、それに伴うハンドリングも、いまひとつ洗練度に欠ける印象を残した。 EVはそれこそ瞬発力や加速性能を誇示することが多いのだが、もともとそこはモーターが瞬間的に最大トルクを発生できるがゆえのEVの得意種目のひとつ。一方、日常で大切なのはそんな単純なところではなく、むしろ微小なアクセルワークでの出力の制御特性だと私は捉えている。ここでいかにドライバーの意図を汲んだ繊細なトルク制御を行えるか、その揺らぎが少ないか、といったところにじつは技術力を要する。 これが日常域のドライバビリティや快適性にも大きく影響してくる。まして雨天やそれこそ降雪時などには、走りやすさだけでなく安全性にも関与するものだ。その点でいえば、シールのRWDはドライ路面で乗る限りでは、思っていた以上に好ましい制御ができているようには感じたが、上には上がいる。たまたま本稿執筆時点で日産「アリア」のB9(FF仕様)を1週間ほど試乗しているところだが、この面での制御では一枚上手であることも感じることになった。
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