BYD新型「シール」の日本での勝算は? 辛口モータージャーナリストが中華EVセダンをRWDとAWDとで乗り比べ…意外な結果をお届けします
まさかの急成長を遂げたBYD、じつは内燃機関の技術も侮れない
そうした中での、中国でのNEV(新エネルギー車:EV、PHEV、FCEV)ナンバーワンブランドとなったBYD。新興自動車メーカーから合弁系メーカーまで乱立する中国は、商用車を含めて年間約3000万台が売られ、うち乗用車だけだと約2600万台だそうだ。乗用車中のシェアでいえば、BYDは12~13%。この数字の中には当然PHEVも含まれており、直近でのEVとPHEVの割合はだいたい5:5に近いと聞く。これは輸出における割合でも同等だ。ちなみにBYDは、2022年に純エンジン車の生産は終えており、NEVのみのラインアップだ。 中国の事情には疎い私が、わかったようなことは言えないのだが、5割以上のユーザーがPHEVを選ぶことに、なんだ、やっぱりそうか、と思うのは、あの広い国土で、充電環境が隅々まで整っているとは到底思えないから、BEVでは不安という人たちも相当数はいるのじゃないのか、ということだった。 むしろ、それを知って安堵はしたが、それゆえか、BYDはエンジン技術も磨いてきており、最近では熱効率46%超えという、数値上では紛れもなく世界トップとなる超高効率ガソリンエンジンを、新型PHEV用に搭載することを発表している。中国は内燃機関では日本をはじめ先行メーカーに勝てないからEV政策を押し進めた、という上から目線の話も説得力を持てなくなるかもしれない。 そんな話題尽きないBYDだが、私が興味を抱いたのは、シールに乗る前に話を伺ったビーワイディージャパン取締役の張 俊衛氏の話だった。張氏は、1995年にバッテリーメーカーとして立ち上げられたBYDに26年ほど在籍されている、つまりは2003年に自動車製造をはじめる前の時期に入社された方だ。 日本に20年以上住んでおり、当初は日本の家電メーカーなどとの取引が多かったところから、降って湧いたようにクルマを造るという話が伝わってきた時には、「そんなのできるわけがない、会社が立ち行かなくなるからやめてほしいと思った」と、当時の思いの丈を語っていただけたが、そこからの目まぐるしい変化と、いまや中国でNEVにおけるトップの販売だけでなく、テスラとEV生産で世界一を競う存在であるなど、まさに「こんなことになるとは思ってもいなかった」といった本音を伺えたことで、私の気分も少し和らいだのだった。
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