おつりが幻の「試験硬貨」だった! 英オークションで額面の約6800倍で落札
数年前に、イギリスである人物がおつりとして硬貨を受け取った。通常の20ペンスと思いきやよく見るとデザインが異なっており、調べると1981年発行の25ペンス(約48円)の試験硬貨だった。 このほど、この硬貨が同国南部のスウィンドンで開催されたRWBオークションに出品され、500ポンドから700ポンド(約10万円~13万円)の予想落札価格を大きく上回り、1700ポンド(約32万円)で落札された。 アートネットが報じたところ、オークションハウスのコイン部門のキンバリー・デイは「こういった試験硬貨は流通させることを目的としたものではありませんでしたが、イギリスの標準通貨とデザインが似ていることから市場に出回ってしまい、数年前に出品者がこのコインを偶然おつりとして受け取ったのです」と説明する。
イギリス造幣局は、新しいデザインや額面の硬貨が導入される前にいわゆる試験貨幣を製造し、現金自動預け払い機や自動販売機などで、新しい貨幣がどのように機能するかをテストする。試験貨幣はまた、新しく国王が就任した場合の肖像画やその他の新しいデザインについて正式な承認を受けるために製造されることもある。通常、試験的に鋳造されるコインの数はごくわずかであり、コレクターの手に入るものはさらに少ない。現在存在する試験貨幣は50枚以下であると推測されており、市場に出回っているのはほんの一握り。前回オークションに出品されたのは2020年だ。 今回出品された試験貨幣はよく見ると、通常と異なることがすぐにわかる。「正等曲線七辺形」と呼ばれる7角形をしており、片面には王立造幣局のロゴである王冠を戴いた盾が描かれ、その上部に「試験貨幣」の文字、下部に年号が記されている。裏面には中央に「王立造幣局試験」の文字と王冠を戴いた玉座が描かれ、その下に国花「テューダーローズ」のエンブレムが配されている。だが、この特別なコインが作られた理由は、はっきりとは分かっていない。 デイは、「このコインには、私たちの貨幣がデザインされ製造されるまでの過程が明らかになるという、さらなる魅力があります。一見すると何の変哲もないコインに見えても、実は大きな価値を秘めているものはあります。ポケットのコインを確認してみてください」と語る。
ARTnews JAPAN