東京で減らない人流、会食で感染拡大……尾身会長が示した「勝負の3週間」後の課題
(2)20~50代が2次感染を引き起こす
これまでも語られてきたことではあるが、行動範囲が広い若い世代を中心とする2次感染の拡大にも触れた。 感染者の多くは20~50歳代で、感染者からうつされた2次感染者の多くも20~50代だとし、「比較的若い人たちが県を超えて移動して2次感染を起こしている」。ただそれは当然意図したものではなく、無症状や軽症者の多いこのウイルスの特徴によるものだと注釈を加えた。
(3)「飲食・会食」を中心に感染が拡大
尾身会長がこの日最も強調したのが、3つ目の「飲食・会食」を介した感染の広がりだった。 欧州の事例として、ロックダウン(都市封鎖)後に「レストランを再開したことが感染を最も増加させた」との調査結果を紹介。 さらに、東京では感染者のうち6割程度が感染者のつながり(リンク)の追えていない、いわゆる「孤発例」であり、感染に至るまでに「一体何が起きたのか分からない」(尾身会長)状態だと指摘した。 孤発例が増えれば地域で感染が拡大していると判断できるため重要な指標になるが、尾身氏の説明によると、東京などの都市部では感染者数が多いことに加え、人々の匿名性が地方に比べ高いことから、感染経路不明の割合が多い。 その上で、直接的なエビデンスはないものの「感染経路の分からない6割の多くは飲食店における感染によるものと考えられる」との見解を示した。理由としては、これまでのクラスター(感染者集団)分析の結果、「日常生活の中では飲酒を伴う会食による感染のリスクが極めて高い」ことなどが分かってきたためだという。
“急所”を抑えた対策が重要に
では年末年始に向け、どんな生活を送ればいいのか。 尾身会長は、感染拡大の第1波、第2波を経験する中で、多くの人が感染対策に協力しており「状況に慣れてきた」側面があることに理解を示した。ただそうは言っても「冬を迎えての対策は今回が始めて」と冬場を迎えた第3波はこれまでの感染拡大局面とは異なるものだと強調。「(ウイルスの)“急所”を抑えることができれば、感染を収束方向に向かわせるのは可能と考える」と訴えた。 具体的には、全国の国民に向けては「食事の際の会話は、飲酒の有無、昼夜や場所にかかわらず感染が生じやすい場面」だといま一度の注意を呼びかけた。 その上で、▽食事は静かに食べる▽会食するにしても、家族やいつもの仲間が原則で、5人以上は控える▽会話する際はマスクを着用。少なくともハンカチなどで口元を押さえる――ことへの協力を求めた。 さらに感染拡大が続く「シナリオ3」の地域の住民には、 ・忘年会や新年会は見送る。やるなら家族やいつもの仲間で、5人以上は控える。 ・帰省についても時期の分散だけではなく、延期も含めて慎重に検討する。 ことを呼びかけた。
医療が手薄な正月に感染者が増える
会見に同席した西村康稔(やすとし)経済再生担当相は、年末年始は会社や店舗が休業するところが多いため、12月28日から1月11日までの間は「人と人との接触を減らす有効なタイミング」だとした。 さらに「今週も活動が活発なまま、人流が減らないまま行くと10日後や2週間後に感染者が増え、まさにお正月にかけて感染者が増える。医療が薄くなる時期にそうならないように、今週からぜひ皆さんにご協力をお願いしたい。そういう思いもあり会見した」と語った。