日本の「公立小学校」を取材したドキュメンタリーが、教育大国フィンランドで絶賛されたのはなぜ? 映画監督に聞く
■これからの時代、日本の教育が世界のヒントになることも ――本作の撮影を通じて、改めて感じた日本の小学校教育の良いところは? 映画でも取り上げていますが、運動会や音楽会などの学校行事ですね。それぞれ得意・不得意、好き・嫌いはありつつも、みんなで一つの目標に向かって一生懸命やっていく。そうした経験が自分の強さの軸になっていると、私自身も感じています。あの時できた達成感をもう一度味わいたいから頑張ろうという気持ちになれるんです。大変なことでも、その先に楽しみが待っていることを小学校の行事を通して学んだと思います。 ――とはいえ、そうした集団行動や協調性を重んじた日本式の教育の連帯責任や同調圧力的な部分に息苦しさを感じてきた人もいます。 欧米の教育のように個を尊重することも大事で、日本ではそこが足りていない部分の一つだとは思います。でも、今後、気候変動や環境問題など地球規模で考えなくてはならない課題を解決していくうえで、日本の教育が世界のヒントになる部分もあるんじゃないでしょうか。今は多様性や個人を重んじるがあまり「集団生活」や「団体行動」という言葉を使うだけで、ニュートラルではなくなっている感じがします。もちろん、一歩間違えれば同調圧力にもなりますし、集団にハマりにくい人たちが生きづらさを感じていることもわかります。ただ、悪いところは良いところと切り分けて課題として向き合うべきで、日本式の教育のすべてを否定してしまうと、何か大切なことも見逃してしまうのではないかとも思います。 人間はいろんな人がいるコミュニティの中で、自分の居場所や役割、生きがいを見つけて暮らしていく社会的生物。日本の小学校はそうしたコミュニティで生きていくための練習の場なんです。今の日本社会に当たり前にある、日本人が気づいていない良いところに気づいて自信を持ってほしい。そんな思いも本作には込めています。