軽度認知障害に抗血小板薬も/医療ジャーナリスト・安達純子
~新薬登場で重要度が増す~認知症の早期発見と予防17 アルツハイマー病は、脳にアミロイドβというタンパク質の一種がたまることで神経細胞が死滅し、脳が萎縮して認知症になる。その1歩手前の軽度認知障害(MCI)は、物忘れなどの記憶障害はあるものの日常生活には支障がない状態。アルツハイマー病の新しい治療薬「レカネバム」や「ドナネマブ」は、アルツハイマー病のMCIや軽度認知症に効果がある。 加えてもうひとつ、国立循環器病研究センター脳神経内科の猪原匡史部長が、約10年前に、抗血小板薬「シロスタゾール」が認知症の進行予防に有効であることを明らかにした。 「シロスタゾールは、脳梗塞発症後の再発抑制などで使用されるいわゆる血圧サラサラの薬です。シロスタゾールを内服している群と、認知症治療薬のドネペジル塩酸塩とシロスタゾールを併用している群では、後者の方が認知機能の低下が抑制されていました。シロスタゾールが認知症治療薬としても寄与できるのではないかと考えています」 こう話す猪原部長は、その後、日本初の多施設共同医師主導治験を実施し、2023年に成果を論文発表した。シロスタゾールが脳内アミロイドβの血液中への排出を促す可能性が示唆されたという。 「残念ながらシロスタゾール単独では、MCIを改善するに至りませんでした。しかし、今後、レカネマブやドカネマブなどとの併用も模索する予定です」 薬の新たな併用治療の開発で、認知症の進行をさらに遅らせる可能性に期待したい。