「両親は老いる見本」92歳の父・要支援2の母を介護する編集者が見た“年をとる”ということ
今の両親の姿に未来の自分も重ねて
これまで家事を手伝わなかった父が、3年前から母の代わりに洗濯物を干し、アイロンがけをするようになった。 「帰省したときには自分のパンツや母のブラトップにアイロンをかけていて(笑)。母はずっと父に従ってきましたが、思うように身体が動かなくなってきてから我慢をやめたんでしょうね。最近では父が食後、冷蔵庫にバターを戻したり、お皿を流しに運ぶように。時折、言い合いをしながらも協力し合って暮らす。私にとって両親は“老いる見本”になりつつあります」 家が大好きな父には今後、高齢者施設に入るという選択肢はおそらくない。そのため、母は「パパより先には死ねない」というのが口癖だ。 「母は昔から親と子の境界線がはっきりしている人。親の人生を子の私がすべて背負うことはないという考えなので、2人が心穏やかに人生を閉じるサポートができればと考えています」 両親を見ていると、できないことより、できる範囲で折り合いを見つけようとしているな、と感じるそう。父は脚が弱くなりつつあるが、家から出なくなった分、新品のパソコンに夢中だ。母は杖に頼りつつも医師から教わった体操で筋肉を鍛え、最新の便利グッズを取り入れて家事スキルを上げている。 「いつも前向きに生活できているのは、わが親ながらすごいこと。自分が70代や80代、90代になったときを想像しても、以前より怖くはなくなってきました。人生の先輩として、私が年を重ねていく道に、火を灯してくれていると思うのです」 一田憲子さん●編集プロデューサー。『暮らしのおへそ』『大人になったら、着たい服』(共に主婦と生活社)も手がける。老親と向き合ったエッセイ『父のコートと母の杖』(主婦と生活社)が好評発売中。