給食がなくなる夏休み。子育て世代の悲願、学童保育の「昼食提供」はなぜ広まらない?
◆学校給食センターや弁当事業者などを活用。増えつつある「昼食提供」
夏休みなどの長期休暇には、お弁当を用意しなければならない学童保育がほとんど。働く親の負担は小さくありません。 【表】学校の先生の平均年収ってどれくらい? しかし最近は、長期休暇に昼食を出す学童保育が出てきました。保護者の負担削減や、弁当持参による食中毒防止などが目的です。 こども家庭庁ではいくつか事例を紹介しています(*2)。たとえば、茨城県境町では、2021年度から学校給食センターを活用して、町内すべての学童保育で1食250円で昼食を提供しています。 登録している子どもの9割以上が利用しているそうです。 また奈良県奈良市や東京都港区のように、弁当事業者と連携している自治体もあります。奈良市の場合、1食あたり250円で、登録している子どもの約4割が利用しています。 島根県では、民設民営の認定こども園の調理室で調理した昼食(おかずのみ)を、同じ法人が運営する学童保育(公設民営)へ1食あたり200円で提供している事業者があります。 ごはんと汁物は学童保育内で子どもたちと指導員が一緒に調理し、食育の機会にしているそうです。 その他、青森県では週に1回、こども食堂と連携した取り組みがあります。 子ども家庭庁が全国1633市町村に実施した調査によると、昼食を提供している学童保育数は全体の約2割でした(※昼食提供しているかどうかを把握している1万3097カ所の学童保育のうち、2990カ所、22.8%にて提供)。 増えてはいるものの、実施している自治体はまだ少数派といえます。
◆ 給食設備、感染症対策……。学童保育で昼食提供が進まない理由
「学校給食法」では、給食に必要な設備や人員について細かく定められています。しかし小中学校とは違って、学童保育にそうした規定はなく、設備や人に制限はかけられていません。 学童保育の普及・発展のために活動する「全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)」の事務局次長である千葉智生さんは、次のように話します。 「かつては長期休みに週1回くらいの頻度で、昼食やおやつを職員と子どもが一緒につくる学童保育も多くありました。 しかし、食中毒の発生により中止になったり、おやつを袋菓子に限定したりするところが増えていきました。コロナ禍以降、おやつ自体を廃止した学童もあります。 その一方で限られた設備を駆使して、毎日とはいわずとも週に数回は食事作りをしたり、子どもたちにごはんと好きなレトルト食品を持参してもらって、温めて出したりしているところもあります。 指導員が工夫して、子どもたちの食を考えてくれているところもあるんです」