<ドル覇権への挑戦>BRICSが仕掛ける共通通貨圏、トランプの反応は“過剰”なのか?
いよいよ1月20日、第二次トランプ政権が始動する。注目すべき論点は多いが、為替市場の観点からはドル高相場の持続を指摘する声が多い。 【図表】1999年3月以降の外貨準備の変化 これに対し、ラストベルトの支持を背負うトランプ次期大統領が果たして黙っていられるのかという疑義はある。為替市場ではリスクシナリオの1つとして第二次プラザ合意という物騒な想定を持ち出す声も聴かれる。しかし、トランプ次期大統領は「強いドル」の庇護者であることへの関心も強そうである。 自身の選挙戦略上は「弱いドル」への選好を露わにすることで製造業従事者に配慮することが望まれるものの、本質的に米国第一主義を信奉するトランプ次期大統領はドルの基軸通貨性にチャレンジするような動きを決して看過しない。 この点、昨年11月末、トランプ氏はSNSにおいて主要新興国BRICS諸国が共通通貨を創設した場合や、米ドルの代替通貨を支援した場合、米国が行う当該国からの輸入に対して100%の関税を課す意向を示した。具体的には「米国が傍観している間にBRICSが脱ドルを進めようとする考えは終わりだ」、「国際決済で米ドルに代わることはあり得ない」、「通貨創設やドル以外の通貨の使用を諦めなければ、(加盟国に)100%の関税をかける。米国への輸出はできなくなると考えるべきだ」などとコメントしている。 しかし、現時点でほとんど実現可能性が感じられないBRICS共通通貨というコンセプトに対して、就任前からわざわざこれほど強いけん制をして見せたことで、逆にトランプ氏(ひいては米国政府)が抱いている脅威のリアリティが増したようにも感じられた。既報の通りだが、2024年10月22~24日にロシア西部のカザンで開催されたBRICS首脳会議の際、ロシアのプーチン大統領がブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの国旗が描かれた紙幣を手にしている写真が公開されており、これがことさら選挙戦の真っただ中のトランプ氏を刺激したのかもしれない。