au TOM'S GR Supraが連覇を祝う3勝目。2番手以下は目まぐるしく展開する大接戦に【スーパ-GT最終戦鈴鹿GT500決勝レポート】
シリーズ史上初の12月開催となった2024年スーパーGT最終第5戦『SUZUKA GT 300km RACE GRAND FINAL』。8日日曜に鈴鹿サーキットで行われた300kmの決勝レースは、チャンピオンの貫禄を示した36号車au TOM’S GR Supraの坪井翔と山下健太が、紆余曲折を経てのポール・トゥ・ウインを達成。自らのタイトルを祝福する今季3勝目を飾っている。 【写真】スーパーGT最終戦第5戦鈴鹿サーキット。ポール・トゥ・ウインのau TOM'S GR Supraと2位Astemo CIVIC TYPE R-GT、3位MARELLI IMPUL Z 前日の土曜公式予選にて、盤石のスピードを見せつけたQ1担当の山下とQ2の坪井による合算タイムにて見事ポールポジションを獲得。ポイントランキングで3ポイント追加して、早々に今季のシリーズタイトル獲得を決めてみせた。これによりノーウエイトのGT500クラス全車が文字どおり、なんの思惑を背負うことなく今季最後のレースで勝利を狙う“全開勝負”の条件が整った。 しかし、その舞台は本格的な冬の到来を感じさせる厳寒のドライバーズ・サーキット鈴鹿。午前の決勝前ウォームアップ走行でもアクシデント、コースオフによる赤旗で10分のディレイが発生するなど、午後の波乱を予感させる状況に。 また、前日の予選Q2で圧巻のコースレコード更新を果たした14号車ENEOS X PRIME GR Supraは、セッション中の『ドライバーの遵守事項違反(他車の妨害となるようなスロー走行)』で5グリッド降格のペナルティ裁定を受け8番手グリッドに。改めて決勝に向けたフロントロウには17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTが並び、2列目3番手に24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zと100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTが続いた。一方でホンダ/HRC陣営の8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTはエンジン交換のため、レース中の5秒ストップが想定された。 ■予選で沈んだニッサン勢が息を吹き返した決勝前半 寒波到来の影響もあり午後の気温も13度止まり。ホームストレートを吹き抜ける冷たい風も強さを増すコンディションのなか、誰が真っ先にタイヤのグリップを発動させ、レースの主導権を握るのか。また、これがラストレースになる23号車MOTUL AUTECH Zのロニー・クインタレッリが、ウォームアップ走行でも最速を刻んだ得意のここ鈴鹿で、どんな走りを見せてくれるかにも注目が集まった。 定刻より10分遅れた12時50分にパレード、そして追加2周のフォーメーションラップへ向かった隊列は、路面温度19度のなかレーシングスピードで1コーナーへ。ここで苦しげに旋回する姿を見せたヨコハマタイヤ装着の3番手リアライズ名取鉄平は、やはりウォームアップ性能の違いから後続に次々と飲み込まれる展開となり、オープニングラップで最後尾まで転落してしまう。 一方、同じヨコハマ陣営の19号車WedsSport ADVAN GR Supra国本雄資は5番手で粘ったものの、シケインで14号車ENEOS X PRIMEの福住仁嶺、さらに3号車Niterra MOTUL Zの高星明誠に先行を許す。その一方、中段では11番グリッド発進だった23号車MOTULのクインタレッリが、僚友に襲い掛かろうかという気迫でブリヂストンのグリップを発動させ、背後の7番手までジャンプアップしてくる。 直後にはトップ10圏内まで進出していた8号車ARTAの野尻智紀がペナルティ消化のためピットへ向かい、上位勢は睨み合いの状況に入っていくと、10周目のデグナー進入では17号車Astemoの塚越広大とGT300車両が絡み、グラベルへ飛び出して5番手へと後退。ここでFCY(フルコースイエロー)が発動する。 約2周を経て12周目にリスタートを迎えると、FCY直前に14号車を1コーナーアウトから仕留めていた3号車Niterraの高星が、表彰台圏内を伺おうとシケインのブレーキングで勝負を仕掛け、16号車ARTAの大津弘樹とサイド・バイ・サイドの勝負を繰り広げる。さらに7番手の23号車MOTULのクインタレッリも、闘志溢れるテール・トゥ・ノーズからシケインのアウト側をズバリ。14号車ENEOS X PRIMEを仕留めるなど、ここへ来てニッサン/NMCの2台が躍動を見せる。 最初の仕掛けではコース外にエスケープしていた3号車Niterraの高星だが、16周目の130RでGT300車両に詰まった16号車ARTAの隙を見逃さず、一気に3番手を奪い取っていく。すると翌周の17周目にピットウインドウが開き、まずは2番手の100号車STANLEY以下5台が一斉にピットへ。続くラップでも首位の36号車auを含めた6台が入り、一気にアウトラップのコールドタイヤ勝負へと傾れ込む。 ■NiterraとAstemoが王者auに迫る このピット作業でトラブルからか大幅タイムロスを喫した100号車は実質トップ3圏外へ後退し、首位を行くチャンピオンの背後には3号車Niterraの三宅淳詞が肉薄する展開へと変わる。同じくポジションを下げた16号車ARTAに対し、コース上で陣営内バトルも制した12号車MARELLI IMPUL Zの平峰一貴は、前日の悔しさを晴らすべくトップ5圏内に浮上してくる。 すると新チャンピオンの36号車au山下の背後で虎視眈々とチャンスを伺っていた3号車Niterraの三宅は、29周目のターン1で果敢にもアウト側からの仕掛けを見せる。ここでは速度管理がわずかに高過ぎたか、フリックボックス下端を擦って火花を散らしながらアウト側にふくらみ、トップ交代はならず。 レースは折り返しを過ぎ、路面温度も16度、14度とジリジリ低下し続けるなか、31周目にはGT300でのトラブル車両対応で2回目のFCYが発動。ここで首位の36号車au、2番手の3号車Niterraに対し、17号車Astemoの太田格之進がラインどりも駆使し、速度制限80km/hのなかジリジリとトップ3形成へと持ち込んでいく。 すると32周目のリスタートがデグナーふたつ目の脱出と重なったことも影響したか。背後からのプレッシャーも含め、クリッピング付近からのレーシングスピード回復を逸り、スロットルオンで3号車Niterraは一瞬のうちにスピンモードへ。すぐさまスピンターンで復帰した三宅だったがが、これで一気に6番手までポジションを落とす無念の展開となってしまう。 逃げを打つなかバックマーカーの一瞬の処理で危ないワイドランも喫しつつ、なんとかポジションを守り抜いた新チャンピオンの山下は、残り3周を目前にした17号車太田の捨て身のアタックも凌ぎ切り、自身2度目の新王座を祝うトップチェッカー。今季3勝目で満天のもとにタイトルホルダーの貫禄を誇示してみせた。 さらに17号車Astemoを挟んで、最後の表彰台には41周目のシケインで100号車STANLEYを気迫で仕留めた12号車MARELLI IMPULの平峰が入り、最後尾スタートからビッグジャンプを決めて、これが惜別となるMARELLI最後のレースを飾っている。 [オートスポーツweb 2024年12月08日]