8年に及ぶFBIの捜査の結果、略奪された先住民族の遺骨がバヌアツ共和国に返還
連邦捜査局(FBI)による8年にわたる捜査の結果、美術品としてニューヨークへ密輸された人骨が、バヌアツ共和国にようやく返還された。 返還式は、バヌアツの国立博物館であるバヌアツ文化センターにて行われ、FBI職員が護衛するなかで先住民族マラクラ族の男性の頭蓋骨が入った木箱が受け渡された。同館の学芸員であるカミは、マラクラ族の遺骨であることが瞬時にわかったとNBCの取材に対して語っており、こう続ける。 「一目見ただけで、元ある場所に戻す必要がある遺物であることがわかりました」 首都ポートビラで8月29日に行われた式典では、遺骨が入った4つの木箱がFBIによってバヌアツに返還された。木箱には、泥で型どられた一対の人間の頭蓋骨と、ランバランプと呼ばれる3つの大きな棺が含まれており、それぞれの棺には、故人の最後の日々を描いた場面が描かれた頭蓋骨が入っていた。 今回返還された遺骨は、ニューヨークに住むコレクターの遺品からFBIによって2016年に押収されたもの。このコレクターは世界中の先住民族からおよそ200点に上る神聖な遺物を収集していたという。返還された遺骨も同様に、神聖な人物の村の家から盗まれたと考えられている。 ポートビラで開催された式典には、FBIの美術品犯罪チームに所属するクリス・マッキオが出席しており、NBCの取材に対して次のように語った。 「ニューヨークは芸術の中心地であるがゆえに、芸術犯罪の中心地にもなっています。誰によって遺骨が略奪されたかは定かではありませんが、遺コレクターの間で骨の需要はありますし、残念ながら取り引きされ、収集の対象となっているのです」 マッキオはまた、バヌアツに返還された遺品の長さは最大で約3.6メートル、重さ約320キロと、FBIの犯罪チームがこれまで直面した中で最大の物流上の困難をもたらしたと付け加えた。「私たちがこれまでに出会った遺物のなかで最も壊れやすく、丁寧に扱わなければならないものでした」
ARTnews JAPAN