トランプ政権を軸に「2025年の国際情勢」を予想。行き当たりばったりの日本は渡り合えるのか
◆最も注目されるのは、米中関係
こうした国際情勢の中でも、2025年の最大の注目は、アメリカと中国の経済摩擦だろう。中国は最近、経済低迷が著しい。中国経済を支えてきた不動産業界と、製造業などの輸出業界という両輪がどちらも停滞しており、不動産では不良債権などが手をつけられない規模に膨れ上がっているとされ、輸出数量も2021年以降に減少が続いている。 さらにトランプ氏は就任後、中国からの全輸入品に10%の追加関税を課すと宣言している。中国の出方によってはさらに高まるとも示唆し、中国側からも制裁措置を取るという発言が出ている。またハイテクや半導体の産業などでアメリカの中国排除も続き、泥試合になる可能性がある。 さらに中国と言えば、日本人にも関心が高い「台湾有事」が起きるかどうかも注目されているが、2025年に台湾有事が起きると考えている専門家は少ない。ただ日本に対して行っているのと同じく、引き続き、台湾周辺で戦闘機や艦艇、民間の船舶などによってプレッシャーをかける活動は続くだろう。 トランプ政権は、中国から入国禁止になっているマルコ・ルビオ上院議員が国務長官に指名され、米軍特殊部隊出身で中国に厳しい姿勢を取る、元ニュース司会者のピート・ヘグセス氏が国防長官に指名されるなど、過去まれに見る“対中タカ派”だらけが集まることなる。外交や安全保障面でも、両国の緊張関係が高まることは必至だ。
◆日本は渡り合っていけるのか
日本は、こうした中国や北朝鮮、韓国などの動きを見ながら、同盟国だが予測不能なトランプ大統領率いるアメリカとの関係も鑑みて、自国の利益を追求できるのだろうか。トランプと良好な関係を築いていた安倍晋三元首相はもういない。これまで行き当たりばったりの言動を見せ、ある意味でいろいろと予測不能な部分もある不安定な石破茂政権が、はたして伍(ご)していけるのか。 2025年、日本人はこれまで以上に日本のリーダーをしっかりと見定める必要があるだろう。さもないと、荒波の中で漂流することになりかねない。 この記事の筆者:山田 敏弘 ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。 X(旧Twitter): @yamadajour、公式YouTube「スパイチャンネル」
山田 敏弘