なぜ阪神は最大「16」あった借金の歴史的返済に成功したのか?
阪神が24日、甲子園で行われた前半戦最終戦の横浜DeNA戦に1-0で完封勝利。同一カード3連勝でついに最大「16」あった借金をすべて返済し勝率を5割に戻した。阪神は先発のジョー・ガンケル(30)が6回を無失点に抑え、7回、浜地真澄(24)、8回、湯浅京己(23)、9回、岩崎優(31)とつなぐ”完封リレー”で横浜DeNAの反撃を許さず、広島と同率2位に浮上した。借金「16」以上の返済は、2010年のヤクルトが借金「19」を返済して以来、12年ぶり5度目の快挙。阪神では56年ぶり2度目。なぜ阪神は借金返済に成功したのか?
矢野監督「後半にドラマを起こす舞台が整ったと思う」
歴史が動いたと言っていい。 1-0のスコアで9回二死一塁。“守護神“岩崎が、代打・嶺井をレフトへのファウルフライに打ち取ると、矢野監督の笑顔がベンチで弾けた。 同一カード3連勝。ついに最大「16」あった借金返済に成功した。 矢野監督はテレビインタビューで「最高です」と第一声。 「絶対に5割にしたい試合でこうやって勝ちきってくれたのはうれしい。3月、4月から考えたらここまで来られることは簡単に想像できたことではなかった。後半にドラマを起こす舞台が整ったと思う」 開幕戦のヤクルト戦で7点差をひっくり返される悪夢から泥沼の9連敗。4月14日の中日戦に敗れた時点でNPB史上最低勝率.063の屈辱の記録を刻み、4月21日の横浜DeNA戦に敗れて借金は「16」となった。通常1か月に借金は「3」から「4」を返せれば、御の字と言われているが、阪神は6月に14勝8敗,7月に12勝5敗と、2か月で「13」も勝ち越して一気に勝率を5割に戻した。 球界でも借金「16」以上の返済をやり遂げた例は過去に4度しかない。直近では、2010年のヤクルトが高田繁監督の途中辞任の後を受けた小川淳司監督代行(現GM)が快進撃をして借金「19」を返済。阪神では1966年まで遡らねばならない。この年も借金が「19」まで膨らみ杉下茂監督が8月に辞任。藤本定義総監督が後を受けてから盛り返して最終的に3位に食い込んだ。 この日の阪神は、歴史的借金返済を成し遂げた強さを象徴するようなゲームをした。 先発のガンケルは2回から4イニング連続で先頭打者を出塁させたが、丁寧に低めにボールを動かす粘りの投球で無失点。5回には二死二塁のピンチで桑原にレフト前ヒットを打たれたが、一塁しか守れない新外国人ロドリゲスの加入でレフトに追いやられた大山が猛チャージをかけて素早くカットマンの糸原までバックホーム。少しでも大山の守備に乱れがあれば、横浜DeNAの三塁コーチも腕をグルグル回しただろうが、大山の好守備が戸柱の本塁突入を阻止したのである。6回には、先頭の牧のセンターを襲う打球を近本がスライディングキャッチ。矢野監督は、その球際の強さを称えたが、チームエラー数が「53」で、守備の不安が課題だった阪神が“守り勝った“のである。 まだガンケルの球数は71球で余力があったが、矢野監督は「この試合は絶対に取るんだということで勝負にいった」と“7回の男”浜地にスイッチ。細川、戸柱を連続三振に斬って取り、代打・山下には16球も粘られたが「大事なところを任せてもらっているので責任をもって投げています」という浜地は根負けせず、三者連続三振。 8回の湯浅も1番から始まる打順を三者凡退に抑え、岩崎につないだ。浜地、湯浅、岩崎の防御率はいずれも1点台。岡田彰布氏が監督時代に確立した「JFK」を彷彿とさせるような浜地―湯浅―岩崎の「HYI」の勝利方程式が確立したことがチームの強みとなっている。