なぜ阪神は最大「16」あった借金の歴史的返済に成功したのか?
巨人、楽天、西武で”参謀”を務めた現新潟アルビレックスBC監督の橋上秀樹氏は、阪神の歴史的な借金返済の要因を「投手陣にあり」と見ている。 「3、4月は、当初抑えに考えていたケラーが打たれ後ろを整備できずにバタバタしたが、元々、先発には安定感があり頭数が揃っていた。しっかりとイニングを稼げる投手が、青柳、西、ガンケル、伊藤、ウィルカーソンと5枚もいて、打線の援護がないときにも青柳で貯金を作れたことが大きかった。また中継ぎの層も厚く、開幕前から投手力はリーグで一番の戦力だと思っていたが、その戦力差を生かす戦いができているということ。これだけの借金を球宴前に返したのは凄いことだけど、勝率5割をキープできる力はあった。広島、横浜DeNA、巨人との2位争いを勝ち切る可能性が高いのは阪神でしょう」 エースの青柳は、11勝1敗と1人で貯金10。現在のチーム防御率は.2.57だが、借金「16」を返済した69試合で見れば、2.10。驚異的数字だ。 また橋上氏は、落ち込んだチームメンタルが回復し、むしろ自信に変わっていることも借金返済の要因のひとつとして指摘した。 「開幕のヤクルト戦で7点差をひっくり返されたことがトラウマとなり、接戦になると“またやられるんじゃないか”とベンチも含めてチームが自信をなくしてムードそのものが弱気になっているように思えた。キャンプイン前日に矢野監督が今季限りの退任を発表したことと結び付けられ、監督の求心力も失われていたように見えた。プロ野球は、個人事業主の集まりだが、実は、一体感やまとまりというものが非常に大事で、信頼感がないとチームの戦術は成り立たない。そのチームメンタルが正常に戻るどころか自信に変わってきたのではないか」 課題は、完封負けを16試合も喫している打線だが、クリーンナップが固定されていることが大きい。6月1日からの40試合で3番・近本、4番・佐藤、5番・大山で35試合組んだ。3番の近本が、30試合連続安打をマークするなど、6、7月は打ちまくり、4番の佐藤に一発は減ったが、三振も減り、勝負どころで打点を稼ぎ、7番で開幕をスタートした大山が6月に打率.318、10本塁打、29打点と爆発して5番打者として存在感を示している。 この日も、虎の子の1点は山本、近本の連打からつかんだ4回一死二、三塁のチャンスに大山が決めたセンターへの犠飛だった。横浜DeNAは、1点をやってもいい内野の守備シフト。ヒットゾーンは狭くなったが、プレッシャーが弱まったのか、浜口のウイニングショットであるチェンジアップを2球続けて見極めた後のストレートをセンターへ打ち返した。戸柱は大山に体を寄せてインハイにミットを構えていたが、やや真ん中への“逆球”となった失投を見逃さなかった。