男子レスリングはグレコに続きフリーでもリオ五輪出場枠ゼロ。惨敗理由は?
来年のリオデジャネイロ五輪への出場権がかかったレスリング世界選手権の全日程が終了した。金メダルを3つ獲得した女子の活躍とはうらはらに、グレコローマンとフリースタイルの男子レスリング陣は、最大で6枠ずつ、合計12枠得られる出場枠すべてを逃した。 結果について各スタイルの監督は「ゼロというのは非常に残念」(和田貴広フリースタイル監督)、「大ピンチです」(西口茂樹グレコローマン監督)と、冷静さを喪わないように話した。その口調が、かえってショックが大きいことをうかがわせた。 フリー66キロ級の米満達弘が24年ぶりに日本男子に五輪金メダルをもたらしたロンドン五輪の前年と比較し、米満が現役引退したいま、4年前より厳しいだろうという予想はされていた。それでも、昨年の世界選手権では5位以内の入賞が4階級あったのだから、ひとつくらいは、出場枠を得られるだろうと思われていたのだ。しかし、甘い期待に現実は残酷だった。 4年前と現在と、何が違うのか。ここでは、組織としての強化のありように着目して差異を考えてみる。 まず五輪出場枠獲得状況を過去と比べよう。ロンドン五輪の前年、2011年の世界選手権で出場枠を獲得したのはフリーが2枠、グレコが0枠だった。そのさらに4年前、北京五輪前年の2007年世界選手権で出場枠を得たのはフリー0枠、グレコが2枠。枠の数だけで比べると今回との違いは2つだけだが、その内容の深刻さは2という数字よりずっと大きい。 それというのも、すでに行われた敗因分析が、これまでと違ったものだったからだ。両スタイルとも選手たちの戦わない姿勢を問題視している。この「戦わない」の意味は、もちろん常に攻めることを最優先にするという意味もあるが、現行ルールにおける勝利に効果的な戦い方をするという意味もある。 レスリングのルールはたびたび変更される。五輪が終わるたびに変わり、その都度、戦い方を調整してレスラーたちはしのいできた。新ルールは文書として配布される文言を把握するだけでは理解したとはいえず、ルールの行間ともいえる、現実に審判たちがどのように判断するかルール運用の把握が重要になる。 もちろん、文言としてルールを理解していればレスリングの試合はできる。ただし、日本で日本のレフェリーが捌く試合ばかりをしていると、日本流にきれいなレスリングの流儀で試合をするようになってしまう。 「選手の特徴に合わせて攻め方はいろいろ変化させたほうがよいけれど、得意な展開になるのを待って攻撃する日本のやり方は、いまの世界の試合展開にマッチしていない」(前出・フリー和田監督) 「リスクを冒して自分の武器で勝負して得点を目指すのを避ける」(前出・グレコ西口監督)