めちゃくちゃな天気のときに映画館で観たい3作。
『Cloud クラウド』 黒沢清(監)
『蛇の道』『Chime』に続き、空前絶後の黒沢清イヤーを締めくくるのが本作。フィナーレに相応しく、主演は現在の邦画界を代表する菅田将暉くんだ。セコい転売ヤーとして生きる菅田くんやその周囲の不穏な人物たちが、互いに権謀術数を繰り広げ、ついには銃撃戦に(!)。 現代社会の闇を浮き彫りにしている部分もなくはないが、そんなことを考える暇も無くなるほど荒唐無稽な展開は、「現代日本において一般人が銃撃戦をするというはちゃめちゃな物語をいかにして成立させられるか?」「そんなことが気にならなくなるくらい荒唐無稽な話にすればいいのだ」と黒沢監督が考えた結果なんじゃないか。とにかく、素晴らしい。9月27日より公開。 9月はこんな映画を観ようかな。
『憐れみの3章』 ヨルゴス・ランティモス(監)
もうッ!? と驚くしかないランティモスの新作は、タイトルの通り3つの物語からなるオムニバス映画。エマ・ストーンをはじめとする何人かの同じ俳優陣が3章すべてに出演し、それぞれに居心地の悪さ満載の奇妙なエピソードで、別の役を演じている。とりわけ爆笑したのは、愛する妻が海難事故で行方不明になり、茫然自失となる第2章。親友夫婦と家で食事をしても気もそぞろな夫は、涙まじりに「あのビデオを見よう」と訴え、親友夫婦は「今はやめたほうが……」と軽くいなすのだが、当然美しい思い出を映した家族ビデオなのかと思いきや、なんと主人公夫婦と親友夫婦のス⚪︎ッピングビデオなのだ! その後の猟奇的な展開も含め、ランティモス、ようやるわ。9月27日より公開。
『SUPER HAPPY FOREVER』 五十嵐耕平(監)
2人の若い男、佐野と宮田が海辺のリゾートホテルを訪れる。佐野は5年前にこのホテルで出会い、結婚までした凪を、最近亡くしたらしい。その後、映画は時計の針を巻き戻し、佐野と凪と出会った、なんてことないけどかけがえのない1日に繊細な眼差しを注いだ後、また現在に戻ると、今度はホテルの従業員であるベトナム人女性へとフォーカスを移す。これら3つの時空を貫くのは、ひとつの赤いキャップだ。かつて佐野と凪の距離を近づけた、しかし今は行方知れずとなったこの赤いキャップの現在地がわかるとき、誰もが清々しい涙を浮かべるに違いない。9月27日より公開。 text: Keisuke Kagiwada
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