日銀・黒田総裁会見9月21日(全文1)市場調節方針現状維持に片岡委員は反対
20、21日の2日にわたり開かれた日銀の金融政策決定会合の終了後、黒田東彦総裁が21日午後3時半から記者会見を行った。 ※一部、判別できない箇所がございますことをご了承ください。
イールドカーブ・コントロールの下で、これまでの金融市場調節方針を維持を決定
朝日新聞:総裁、よろしくお願いします。幹事の朝日新聞からまず3つ、お願いします。最初に、本日の金融政策決定会合の内容についてご説明をお願いいたします。 黒田:はい。本日の決定会合では、長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールの下で、これまでの金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定しました。すなわち、短期金利について日本銀行当座預金のうち、政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利について10年物国債金利が0%程度で推移するよう、長期国債の買い入れを行います。買い入れ高についてはおおむね現状程度の買い入れペース、すなわち保有残高の増加額、年間約80兆円をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう、運営することとします。また、長期国債以外の資産買い入れに関しては、これまでの買い入れ方針を継続することを全員一致で決定しました。 わが国の景気の現状については、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働く下で、緩やかに拡大していると判断しました。やや詳しく申し上げますと、海外経済は総じて見れば緩やかな成長が続いています。そうした下で、輸出は増加基調にあります。国内需要の面では、設備投資は企業収益が改善する中で緩やかな増加基調にあります。個人消費は、雇用、所得環境の着実な改善を背景に、底堅さを増しています。この間、公共投資は増加しており、住宅投資は横ばい圏内の動きとなっています。 以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けています。また、金融環境については極めて緩和した状態にあります。先行きについては、わが国経済は緩やかな拡大を続けるとみられます。国内需要は極めて緩和的な金融環境や、政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、企業、家計の両部門において、所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続する下で増加基調をたどると考えられます。輸出も海外経済の増加を背景として、基調として、緩やかな増加を続けるとみられます。 物価面では生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、0%台半ばとなっています。予想物価上昇率は弱含みの局面が続いています。先行きについては、消費者物価の前年比はマクロ的な需給ギャップの改善や、中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。リスク要因としては、米国の経済政策運営や、それが国際金融市場に及ぼす影響、新興国、資源国経済の動向、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、金融セクターを含む欧州債務問題の展開、地政学的リスクなどが挙げられます。 日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。また、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続します。今後とも、経済・物価金融情勢を踏まえ、物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行います。以上です。