あなたがいなくなっても、お母さんが大丈夫なようにしておいて。年金15万円・80歳の母が「深刻な病気の疑い」を打ち明けた長女に放った、衝撃のひと言
50代長女、ワガママな実母の介護にゲッソリ
介護負担の重さに耐えきれず…といった悲しいニュースが定期的に報道されることからもわかるように、介護はときに大きな負担となる。 厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』によると、主な介護者が「ほとんど終日介護にあたったいる」という割合は、「要介護1」では11.8%だが、「要介護2」は17.0%、「要介護3」は31.9%、「要介護4」は41.2%、「要介護5」は63.1%…と、介護度が重くなるほど、負担も重くなっていく。 世田谷区在住の50代女性は、実家で独居生活を送っている母親の介護にゲンナリしていた。 「私は3人きょうだいの長女で、3歳年下の妹と、5歳年下の弟がいるのですが…」 女性のきょうだいはいずれも都内在住で、実家には電車で20~30分の距離。しかし、下の2人は仕事や家庭を理由にほとんど介護に手を出さない。 「妹と弟のあまりに他人事な様子に腹が立ちまして、無理やり実家へ送り込んだこともあるのです。しかし、逆に母から〈あの子たちが来ても、家のことはなにも頼めない。迷惑だから来させないで〉といわれてしまい…」 介護サービスの利用を検討したが、母親は「なぜ家族がいるのに、他人の手を借りる必要があるのか」と納得しない。 「挙句の果てには〈あなたは長女なんだから、長女としての責任を果たして〉といわれてしまい…」
「あなたに万一のことがあったら、お母さんは…」
仕事に、家庭に、母親の介護に…と、多忙な生活を送っていた女性だが、ある日、体調不良を感じ、忙しい合間を縫って診察を受けた。すると、重大な病気を疑わせる兆候があると指摘され、大きい病院へと回されることになった。 「あまりにショックで。病院の帰りに実家に寄ることになっていたので、真っ先に母へそのことを打ち明けたのです」 しかし、母親の口から出たのは衝撃的な言葉だった。 「あら、そうなの? 困ったわ」 「あなたがいなくなっても、お母さんが大丈夫なようにしておいてよ?」 女性はなにも言葉を返すことができず、そのまま帰宅した。 「あまりのショックで泣くこともできませんでした。私の心中を察したのか、高校生のひとり娘が〈ママ、一体どうしたの? なにがあったの?〉と心配してくれましたが、とても話せなくて…」 数週間後、検査の結果、女性の病気の疑いは晴れた。 「最初は母親の言葉にショックを受けたのですが、あとからだんだん腹が立ってきて。でも、思い返せば昔から自分本位な人だったんですよね…」 女性は妹と弟を呼び出し「母親に介護施設へ入所してもらう」と宣言し、いよいよ計画は実行に移されることになった。 「母は〈子どもがいるのにどうして施設に行かなきゃいけないの!?〉〈親を施設に入れようなんて、恥ずかしくないの!?〉って騒いでいましたが、知りませんよ、そんなこと」 女性の母親は80歳。施設の入居期間は5年以下といわれているが、長期の入居も想定し、月額費用は母親の年金額の月15万円で収まり、入居金も少額ですむところを探した。 「母を施設に入れて、母の身の回りの心配をしなくていい状況になったら、私はものすごく母の介護にエネルギーを取られていたんだな、と、改めて実感しました」 「これからは、母にかけていたエネルギーを、自分の家族や、自分のために使いたいです」 女性はそういうと笑顔を見せた。 介護の負担が、知らず知らずのうち、子どもの人生に大きな影響を及ぼしていることもある。家族として助け合うのは理想だが、理想のために無理を重ねてしまっては、何にもならない。日本はさまざまな行政サービスが整備されている。頼れるところは頼り、利用すべきところは利用し、なにもかもひとりで背負い込み過ぎないことが重要だ。 [参照] 厚生労働省「介護給付費等実態統計月報」 総務省「人口推計月報」
THE GOLD ONLINE編集部