70代おひとりさま女性が、年金で暮らせる「町」がある。リーズナブルなサ高住、自立期から看取りまで
昨年は、モトザワ自身が、老後の家を買えるのか、体当たりの体験ルポを書きました。その連載がこのほど『老後の家がありません』(中央公論新社)として発売されました!(パチパチ) 57歳(もう58歳になっちゃいましたが)、フリーランス、夫なし、子なし、低収入、という悪条件でも、マンションが買えるのか? ローンはつきそうだ――という話でしたが、では、ほかの同世代の女性たちはどうしているのでしょう。「老後の住まい問題」について、1人ずつ聞き取って、ご紹介していきます。 【写真】広い!小学校の教室を改修した13戸のセーフティネット住宅 * * * * * * * ◆人生100年時代の共生型コミュニティー ずっと働いて、自分で自分を食べさせてきたシングル女性たち。なのに、老後に住む家に困るなんて! そんな現実に抗い、ないなら作っちゃえ!と、独身の70代女性たちが、自分たちのような「働く女性が住み続けられる終の住処」と、それを含む「町」を北関東で作りました。 廃校を利用した「町」には、自立して暮らす人用の「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」のほか、支援や介護の必要な人用の住居、「看取り」までしてくれる訪問介護サービスまで。 さらに、カフェや店舗、ホールや図書室、オフィスもあり、さながら複合施設です。文化イベントも多く、外からも人を集める「場」になっています。 「100人が住んで80人が働いている」そうです。 高齢者だけに閉じた、姥捨て山的な「ムラ」ではなく、老若男女、多種多様な人たちがともに暮らし、働き、訪れ、交流する「人生100年時代の共生型コミュニティー」を目指しているそうです。 ********************
◆那須まちづくり広場 田んぼや畑、林が広がる山あいのエリアに、その「町」はあります。JR東北新幹線・新白河駅から車で約15分。「那須まちづくり広場」は、廃校になった栃木県那須町の小学校跡地に作られました。 「朝日小学校」と彫られた石門の先の校庭には、2階建ての住宅棟と、2戸連結した長屋式の平屋がずらり。一部はおしゃれなログハウスです。計49戸のこれらの住宅は、60歳以上の、自立して暮らせる人を対象とした「ひろばの家・那須1」という名の「サ高住」です。広さはワンルームから2LDKまで、約29平方メートル~66平方メートル。いま第2期工事中で、東側にさらに32戸の平屋を、来年初め完成予定で建設中です。 すでに建っているサ高住のうち、入居が可能な2LDKを見せてもらいました。平屋で、玄関まではスロープ。玄関扉はガラス戸で、もしもの時には外から室内の様子が覗えます。多くの人はまだまだ元気なので、プライバシー保護のため、目隠し代わりのカーテンや暖簾を掛けていました。結果的にどの住戸も個性的な玄関先です。 高齢になった時、マンションや団地では、玄関ドアがどれも似ているために自宅が分からず迷子になるといった「事件」をよく聞きますが、ここではその心配はなさそうです。
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