70代おひとりさま女性が、年金で暮らせる「町」がある。リーズナブルなサ高住、自立期から看取りまで
◆本当の魅力 サ高住の建物として、平屋の自由設計は魅力的ですし、食事宅配や送迎サービスがあるのも、将来の看取りまで託せるのも、安心材料です。でも、このサ高住の本当の魅力は他にあるといいます。旧小学校の敷地全体で、小さなコミュニティーを形成していることです。「町」です。 「人生100年時代の、多世代が共生するコミュニティーのモデルを実現することを目指しました」と、那須まちづくり株式会社の近山恵子代表(75)が話します。高齢者施設は高齢者だけが住み、施設内だけで完結して、施設の外とは切り離されてしまいがちです。ですが、「那須まちづくり広場」では、他の世代のさまざまな人たちも出入りするように、カフェ、店舗、オフィスなど、あえて多様な業態や人を誘致しました。それぞれの施設は、同社のほか、ワーカーズコープなどが運営しています。 例えば、改修・転換利用された小学校の旧校舎は、駅前再開発でできた複合施設のようです。オーガニックコットンの洋服や小物を売る店舗、コンサートや講演会も開けるホール、グランドピアノや弦楽器が並ぶ音楽工房、月代わりでアートが展示されるギャラリースペース……。広い廊下は、片側に開架式の本棚を並べて図書室に。最近のベストセラーから、大判のアート本、社会学や人文学の専門書まで。地域住民の図書館司書が、ボランティアで選書を担っています。 サ高住の三食を担うカフェは、管理栄養士がメニューを作る家庭料理や、シェフの日替わりランチが人気です。当地に移住してきたパティシエの作るスイーツも提供され、周辺地域から子連れ客やママ友たちもランチやお茶に訪れます。カフェの隣には、自然食品の店「楽校deマルシェ」も。こちらも、近隣からわざわざ買い物に来るほどとか。 校舎内にはほかに、小さな会社のオフィス、デイサービス施設、低家賃の賃貸住宅「ひろばの家・那須3」やゲストハウス「あさひのお宿」もあります。それらの訪問者たちも、カフェやマルシェを利用しています。那須町から借り受けた廃校がまるごと、人を呼び込む「小さな町」になっているのです。これぞ地方創生。「那須まちづくり広場」のこのコンセプトは、近山さんが那須支所長を務める一般社団法人「コミュニティネットワーク協会」とともにプロデュースしました。
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