<The追跡>最初の開通先はなぜ台湾? 「IOWN」開通の舞台裏【WBS】
通信大手のNTTが進めている光通信技術を使った次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」が初めて、国際回線として日本と台湾の間で開通しました。なぜ、最初の開通先が台湾だったのか...経済安全保障の思惑も絡んだ、IOWN開通の舞台裏を追跡取材しました。 NTTが中心になって開発する次世代通信基盤「IOWN」。29日、台湾の通信大手「中華電信」のデータセンターと接続しました。約3000キロをわずか0.017秒で繋ぎます。IOWNとして初めて海外と繋がったことになります。 IOWNとは電気信号を光に置き換える次世代の通信技術です。従来の通信と比べて容量は将来的に125倍となり、通信の遅れもほとんどなくなるといいます。さらに消費電力も100分の1。スマホの充電は年に1回すればよくなるとも言われています。
IOWNとはそもそもどんな技術なのか。開発の最前線にテレビ東京のカメラが初めて入りました。 NTTの松尾慎治フェローが見せてくれたのは、シリコンの基盤。ここに目に見えない細い回路が埋め込まれています。それを特殊な機械にセットし、針から電気を流します。 左側は電気信号から変換された光。これが回路を通って、画面右の丸い光となって出力されます。間を繋ぐ回路が光っていないのは、それだけ漏れがなく、光に変換した証拠だといいます。 「電気だとここ(間)でいろいろ消費する。光だとほとんど損失なく伝えられる」(松尾フェロー) NTTは、あらゆる電化製品などに、このIOWNの技術を組み込むことで圧倒的な低消費電力の実現を目指しています。
8月28日。初めて日本と海外がIOWNで繋がるセレモニーを前に、最終的なリハーサルが行われていました。IOWNは、低消費電力であることとともに、大容量のデータを遅延なく送れるのも特徴です。 なぜ台湾との開通を急いだのでしょうか。NTTでIOWNの開発を指揮するNTTの川添雄彦副社長にその狙いを聞きました。 「IOWNとしてニーズが高まっているのが、データセンターの間を繋ぐ用途。データをバックアップして、いろいろなところに保存することもあるので、光で繋がっていると一つの大きなコンピュータが存在するかのようにプロセスが進んでいく」(川添副社長) 日本と台湾のデータセンターを光で繋げ、ほぼ遅延のないデータ送信を実現する。一つのコンピュータ構想があるといいます。 「台湾有事を想定しているのか」(大江麻理子キャスター) 「私の口からははっきり言えないが、いろいろなところにバックアップ体制・拠点を作っている」(川添副社長) そこで、台湾の中華電信の郭水義会長にIOWN開通の意図を尋ねると、有事の際には台湾企業のデータをIOWNを通じて日本に移すことも想定しているようです。 「IOWNによって自然災害などの緊急時に、企業の持続、事業継続計画(BCP)を実行できる。これは非常に意義がある」(中華電信の郭水義会長) こうした有事を想定した民間の連携を裏で支えているのが国です。自民党経済安全保障推進本部長の甘利氏は「例えば九州にあるデータが自然災害の影響を受けて大変なことになるだろうと予測できたら、分単位で大量のデータを台湾に移送できる。非常に経済安全保障上は有利」と話します。 様々な思惑を乗せて動き始めた光の技術IOWN。NTTは経済安保を追い風に、ビジネスとしても勝ち筋を見出すことができるのでしょうか。 ※ワールドビジネスサテライト