東京五輪挑戦より世界陸上を選択したプロマラソンランナー川内優輝の選択は正しかったのか?
日本陸連は5月28日、都内で会見を開き、今秋に行われるドーハ世界選手権(9月27日~10月6日)のマラソン代表選手を発表した。男子は二岡康平(中電工)、川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)、山岸宏貴(GMOアスリーツ)。女子は谷本観月(天満屋)、池満綾乃(鹿児島銀行)、中野円花(ノーリツ)が選ばれた。 日本代表6名は全員がMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の有資格者だが、自らの意思でドーハ世界選手権を希望。9月15日に行われるMGCの出場は辞退することになる。 登壇した尾縣貢専務理事は、「MGC出場権を獲得した本当に力のある選手をエントリーすることができました。本番でも活躍できるメンバーだと思っています」と挨拶すると、河野匡長距離・マラソンディレクターも、「十分に入賞を狙える可能性がある。自信を持って送り出したい」と話した。 威勢の良い言葉が連発したものの、代表6人中5人は世界大会(五輪、世界選手権)の未経験者。自己ベストを考えても、世界と真っ向勝負できるとは思えない。近年の世界大会代表でいうと“最弱”の部類に入るだろう。 そのなかで唯一、期待を持てるとしたら、4度目の世界選手権となる川内だ。17年ロンドン大会で日本代表の引退を表明したが、公務員ランナーからプロランナーに転向したことで翻意。日本代表復帰となった。瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーも、「入賞を目標にしたい。百戦錬磨の川内くんがいるし、チームリーダーになってくれればいけるんじゃないか」と期待を込めた。 川内はファイナルチャレンジ(福岡国際、東京、びわ湖)で設定記録(2時間5分49秒)を突破すれば、東京五輪代表をゲットできる可能性が残されている。しかし、自己ベスト(2時間8分14秒)を考えても現実的な目標ではない。 MGC(東京五輪の可能性)とドーハ世界選手権。二者択一のなかで川内は後者を選んだことになる。プロランナーとして、この選択は正しいのだろうか? プロランナーはレースの出場料と賞金が収入の柱となる。世界選手権はというと、出場料はなく、各種目の入賞者には賞金(優勝者に8万ドルなど)が支払われる。一方、オリンピックには出場料と賞金はないものの、メダルを獲得すると日本の場合、JOCから報奨金(リオ五輪では金500万円、銀200万円、銅100万円)が出る。 直接的に発生する収入でいうと、世界選手権の方が上になるが、世界のトップランナーの間ではオリンピックの方がプライオリティは高い。オリンピックは“名誉”という考えが浸透しているからだ。