「学校でも社会でも、親からも褒められてこなかった子が多いです」――日本初の少年院「国際科」で学ぶ、外国ルーツの子どもたち
彼らはコンビニ強盗や薬物、性犯罪といった罪を犯し、少年院にまで来てしまった者たちだ。険しい、荒々しい不良少年にちがいないとイメージしていたが、実際は逆だった。取材者が来ているという緊張はあろうが、それを差し引いても気弱でおどおどした印象を受ける。 「どちらかといえば、社会ではみんないじめられっ子だったんです」 屋代さんが言う。親に連れられて日本に来たものの自然に言葉を覚えられる年齢ではなく、学校についていけず落ちこぼれ、友達もできなかった者。いじめから助けてくれた同郷の外国人に勧められて薬物に手を出した者。実の親や、あるいは義理の親に虐待を受け続けていた者。 この国に居場所を見つけられず、日本語も、物事の善悪も、誰からも教えられないまま育ち、そして罪に手を染めた。
だからといって彼らの犯罪が許されるわけではない。 しかし、日本人ならごく自然に養われるはずだった言語と、規範が欠如していたことが、犯行の背景にある。そしてここは、在院者がみな社会へと帰る少年院なのだ。母国にも受け入れてくれる場所がなく、出院しても日本で生きていかなくてはならない少年も多い。であるなら、二度と同じ過ちを繰り返さないように、社会生活に必要な言葉とルールを教える……それが「国際科」だ。
外国人少年の犯罪は減少傾向にあるが
久里浜少年院に「国際科」が設置されたのは1993年のことだ。外国にルーツを持つ少年たちの中でも、日本語力が著しく欠如しているなど、日本人と同じように扱うのは難しい者を対象に特別な教育課程を施すことになった。原則として2年以内の在院期間で、日本語力と、日本の生活習慣を養う。 こうした対応が求められるほど、90年代には来日した外国人の子が社会になじめず、荒れた時期があった。 しかし現在、外国人の少年院入院者は減ってきている。2002年の153人をピークに右肩下がりで、ここ数年は50~60人ほどで横ばい、2021年は47人だった。この間(2002~2021年)、日本に暮らす外国人が185万人から276万人に急増していることを考えれば、外国ルーツの少年の犯罪行為は減少傾向にあるといえるだろう(いずれも法務省による)。