なぜエンゼルスの“二刀流スター”大谷翔平は目覚めたのか…進化する打撃と2つのルール変更の追い風
大谷はさらに、こうメリットを口にする。 良いスピードが出れば、それだけ長く(ボールを)見られるし、遠くに飛ぶ」 長く見られるかどうかは、インパクト直前の瞬間的なスピードでしかないバットスピードだけでは判断できないが、本人がそれを感じているということは、コンタクトまでの平均スピードも速くなっていると想定できる。 大谷は、「その要素(バットスピード)一つだけで、そうなるって実感できることはない」と断りつつも、改めてこう話した。 「そこが伸びてるっていうことは、他の要素ももちろん、良くなってるってことなので、それに付随して(全体が)良くなっているなって、実感出来ることはある」 バットスピードからすべてを論じることは短絡的。しかし同時に、正しい動作を含めた様々な打撃要素と連動するだけに、軽視も出来ない。 速くなっているということはやはりそこに大谷の一つの進化形を見出すこともでき、やや始動が遅れながらも、それをスイングスピードでカバーし、レフトへ運んだロッキーズ戦での本塁打や、18-20年は、本塁打が1本もなかった内角高めの球を捉えた今季第1号は、そのことを証明した。 さて、そんな技術面の進化に加え、大谷が今季、昨季以上の数字を残せるか、例えば、50本塁打はどうかといえば、大谷を取り巻く環境やルール変更が、追い風になりうる。 昨年後半は不在だったマイク・トラウトとアンソニー・レンドンが復帰。開幕戦でも、1番・大谷、2番・トラウト、3番・レンドンという並びだったが、2人が大谷の後ろに控えることで、相手投手は大谷と勝負せざるを得ない。象徴的だったのが、16日のレンジャーズ戦で第3号を放ったシーンだ。 2点リードの八回2死二塁の場面で、大谷に打席が回ってきた。昨年なら、勝負を避けられて歩かされるか、最初から申告敬遠の場面。しかし、マウンド上のグレッグ・ホランドは初球、カーブでストライクを取りに来た。大谷はそれを捉えたが、昨年中盤以降では見られなかった配球だった。 ジョー・マドン監督はキャンプ中、「去年後半、相手は厳しいコースに投げ、歩かせてもいい、という攻めをしてきた。しかしトラウトらがいるから、今年はそうはいかない。ゾーン内のボールも増えるから、ショーヘイにはチャンスが増える」と度々話していたが、そのシナリオ通りだった。