なぜエンゼルスの“二刀流スター”大谷翔平は目覚めたのか…進化する打撃と2つのルール変更の追い風
オープン戦で3本塁打を放つなどして、自身初の開幕ロースター入りを決めたアデルにも話を聞くと、「5マイル(約8キロ)ぐらい、スイングスピードが上がった」と教えてくれた。 5マイル(約8キロ)は、決して小さな変化ではないので驚いていると、「確かに、ドライブラインには、長さや重さの違うバットを使ってスイングスピードを上げるプログラムがある。ただ、フィジカルのトレーニングもするし、動作解析もして、体の使い方を根本から見直す。だから、何がバットスピードを上げるのに一番効果的だったかを特定することは難しい」と断った上で、「自分の場合は」と言いながら続けた。 「動作解析をしたら、手が先に出てしまうスイングだった。そこを修正してから、打球にパワーを伝えられるようになった」 アデルはその体の動きを「Kベスト」という上半身に装着するベストのようなデバイスで計測。強い打球を打つには、腰、体のコア、腕、手というように、体の大きな部位から小さな部位へと順番に体を動かすことが必要とされるが、「Kベスト」ではそれぞれの体の部位が、どのタイミングで始動し、どこでスピードのピークが来ているかが判別できる。アデルはそこで順番が狂っていることを把握し、動きを見直した。 実は、大谷もかつて、動作解析をした際に下半身と上半身の連動が上手くいっていなかったことをドライブラインで指摘されたと明かしている。19年9月に左膝を手術した影響で、20年は下半身が使えず、上体だけでボールを捉えに行くような打ち方になっていた。 動作を改善して迎えた昨季序盤、4月9日のブルージェイズ戦で、泳がされながらも右中間へフェンス直撃の二塁打を放つと、大谷は、「(去年でも)当てるのはもちろん出来ると思いますけど、ああいう飛距離を出すっていうのは下(半身)でしっかりと捉えないと難しいので、そこは去年(20年)と違うところ」と説明した。 そうした変化を経ての今年。 前年のように左膝の故障が癒えた、というわかりやすい体の変化はないものの、一昨年よりも昨年、昨年よりも今年と、明らかにバットスピードが上がっている。では、大谷自身はバットスピードの数値をどう捉えているのか。 本人に問うと、「バッティング要素の一つでしかない」とまずは答えた。 その通りで、バットスピードは、「球速」、「バットの質量」、「芯で捉えているかどうか」と並んで、打球初速を決定づける一要素にすぎない。 しかし、「もちろん、いい動きをすれば、それなりに良いスピードが出る」と大谷は補足。アデルのケース同様、正しい体の使い方が出来ているかどうか、それを把握するバロメーターとなりうることを示唆した。