高まるインフレ圧力 今後の米利上げペースは加速化する?
ドットチャートは市場の予想以上の上方改定に
注目のドットチャート(FOMC参加者の政策金利見通し)の中央値は2022年末が2.00%(0.25%の利上げ7回相当)、2023年末が2.875%(3回強)、2024年末が2.875%(0回)となり、恐らく大方の市場関係者にとって予想以上の上方改定となりました。2022年は毎回のFOMCで利上げ、インフレ動向次第では0.50%の利上げも十分に考えられる分布です。実際、FF金利先物は5月に0.50%の利上げがあることを相応に織り込んでいます。その後2023年は追加で(年半ば頃までに?)3回強の利上げ、2024年は様子見に転じる姿となりました。 他方、景気を加速・減速させないレベルの金利とされる中立金利は2.38%へと前回予測時の12月水準(2.50%)から小幅に切り下がりました。労働市場の構造変化などを踏まえ、経済の実力がパンデミック発生前より小幅に下振れるとの見方が浮上している模様です。利上げの天井として意識されていますから、FRBはそれを明確に上回る水準へとFF金利を引き上げる計画を示した形です。
2022年の物価見通しは+4.3%と大幅に上方修正
成長率・物価見通しは2022年が大幅に改定されました。実質GDP(国内総生産)は+4.0%から+2.8%へと大胆な下方修正で、2023~24年は不変でした。一方で2022年の物価(PCEデフレータ)は+2.6%から+4.3%へと極めて大幅に上方修正されました。その後2023年は+2.7%(12月+2.3%)、2024年は+2.3%(+2.1%)へと急速に低下するとの見通しでしたが、FOMC参加者全員がその不透明の強さに言及しました。インフレが経済成長を阻害する構図が明確になった印象です。
長短金利差が逆転した場合のFRBの対応に注目
このようにFRBはインフレ退治を最優先課題として、2022年中は積極的な利上げを敢行する蓋然性が高まっています。一方で金融市場では景気のオーバーキル(過度な金融引き締めに伴う景気後退)に対する懸念が強まっており、景気先行指標として一定の有効性を持つ長短金利差は縮小傾向を強め、3月16日には5年10年金利差が0.2ベーシスポイント(bp)とほぼゼロとなりました。 長短金利差の逆転は、銀行貸し出しを抑制するほか、そのこと自体が人々の景気後退懸念を喚起してしまい前向きな経済活動を阻害します。今後、FEDが果敢な利上げを実施するのを横目に長短金利差が逆転した場合、FRBの政策態度がどのように変化するか注目したいところです。
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