1枚8万円のシャツが汚れる前に「元を取る」ことはできるのか?ファッションエディター・大草直子が<服1着の適正価格>を考えてみる
40代、50代は、更年期真っ只中。気力が落ちたり、体重がコントロールできなかったりするせいで「おしゃれが楽しくない…」と悩む方もいるのではないでしょうか。そんななか、「45歳から55歳は、おしゃれも少しスローダウンする勇気を持って」と話すのは、ファッションエディターやスタイリストとして活躍する大草直子さんです。そこで今回は、大草さんの著書『見て触って向き合って 自分らしく着る 生きる』から、大人のおしゃれのTIPSを一部ご紹介します。 【書影】気鋭のファッションエディターが本音で明かす、大人のTIPS。大草直子『見て触って向き合って 自分らしく着る 生きる』 * * * * * * * ◆「1着」の適正価格――その考え方 商品タグに記載された値段と、見えない理由や意味までを内包する価値。 誰が見ても変わらない値段の、価値を決めるのは実は自分だなあ、と思います。 週に何回使えるか、季節を超えて活躍するか、10年経っても愛は冷めないか。新品のときよりも、文字通り価値が上がるか――など。 例えば、レザーのライダースジャケット。バイクに乗るとき、風をよけ、万が一転んだときも、自分を守ってくれる素材とディテール。 実用にのっとったデザインであるから、決して古くなることはないし、基本、ニットや布帛(ふはく)は劣化していくけれど、レザーだけは価値を増していくと信じている。 おろしたての今日より、10年後のほうが間違いなく格好いい。自分の体温で少し柔らかくなり、体のラインに合わせて角が取れていく。 だとすると、10年の価値を値段に映して良いのではないでしょうか。
◆価値は値段を凌駕する 牛革の野球用グローブからスタートした、アメリカのCOACHのレザーは丈夫でクールだし、イタリアのレザーファクトリーブランド、チンクワンタの1着は、それこそ第二の皮膚のように滑らかで上質。 どちらも値は張るけれど、この先を共に走ると思えば適正価格に思えます。 しかも、ライダースは春先、そして秋から冬のはじめまで、着られる期間が長い。 ノースリーブのワンピースは7月から9月までの3か月しか着ないと思えば、余計に価値を感じられます。 さらに、スウェット合わせの超カジュアルから、スリップワンピースに羽織ったドレスアップまで、活躍のシーンも幅広い。 そう思えば、間違いなく、価値は、値段を凌駕(りょうが)するのです。 と、こんな「言い訳」が効くのは、ほかにはエルメスのバーキンやケリー、シャネルのマトラッセ、グッチのビットローファー、ATONの生カシミヤのコートなど。
【関連記事】
- ファッションエディター・大草直子 今パンツシルエットは太いのが主流でも、数年後ガラリと…おしゃれは「なる」ものでなく「する」ものと考えよう
- 女性の体をきれいに見せる<ジャケット>。より活躍するのはシングル?ダブル?ファッションエディター・大草直子がおススメの着こなしを紹介
- 何を着ても楽しくない…大草直子が<更年期のおしゃれを楽しむ方法>を徹底解説。「40代に入ったら絶対にすべきなのは…」
- 人気スタイリストが教える、毎日同じ服を着続けても飽きない理由。「1セットの服」で自分を好きになる方法とは?【2024年上半期BEST】
- スタイリスト・西ゆり子「服を変えれば、人生が変わる!でも、教えてくれる場所がない…私が『着る学校』を作った理由」【2024年上半期BEST】