「選手は目の色が変わる」 U18小倉監督が指導法を伝授 甲子園塾
「野球は難しいスポーツと思われているが、そうじゃないんだと。子どもたちに『野球って簡単じゃないか』と思わせることが大事」 【写真】甲子園塾で、水平にバットを振る指導法を見せるU18の小倉全由監督(中央)。若手指導者を見本にして高校生たちを指導した 前日大三(東京)監督でU18(18歳以下)日本代表の小倉全由監督が、集まった若手指導者に向けて熱心に語りかけた。 日本高校野球連盟が毎年開催する「甲子園塾」(正木陽塾長)が12月1日まで3日間行われた。受講者は、全国から集まった指導歴が原則10年未満の監督や部長たち。小倉監督が講師役を務め、グラウンドでの実技講習などが行われた。 「強打の三高」として日大三監督時代に甲子園で2度優勝した小倉監督は、協力校となった神戸学院大付の選手とキャッチボールをしたほか、守備練習でノックを打ったり、打撃練習でトスを上げたりと身ぶり手ぶりで教え方を披露した。 キャッチボールでは、短い距離で両ひざをついたまま投げる練習方法を伝えた。 「守備の基本はキャッチボール。まずは人さし指と中指でしっかりボールに力を伝える」 右投げの場合は右肩の方に体をひねってから、腕を体の左側に投げ下ろす。「上体だけしか使えないことで重心の移動を意識できる。くせのない投げ方を覚えられる」。いすに座って上体で投げる練習も効果があると明かした。 打撃練習の講義では、「バットを地面と平行に振る練習」について説明した。 2001年夏、11年夏の全国選手権大会で優勝した強力打線を引き合いに、「映像を見返すと高山俊(元阪神)たちは、しっかりレベル(平行)スイングができていた」と振り返った。 近年はYoutubeやSNSから情報を得る球児が増えている点に触れつつ、「例えばプロ野球選手は基本の正しいスイングができた上で、150キロの直球を打つために工夫している。(SNSなどには)高校生には合っていないものもある」と指摘。大谷翔平(ドジャース)らをまねた極端なアッパースイングが増えているという。 そこで小倉監督は、体の正面にまっすぐバットを出し、地面と水平になるように左右に素振りする練習を見せた。「これは1年生にも教えやすい」 水平にバットを振る動作を繰り返してからトスバッティングをすることで、腰が不自然に上がるクセがつきづらくなり、スムーズに回せるという。 若手指導者たちに向けて「野球を難しく考えない。一つ一つの動作で分けてしまえば簡単だから」と語りかけた。 また、選手たちを指導する中で、「そうだ、今のはいい」「おお、さっきより変わって良くなったな」と積極的に声をかけるシーンが目立った。 この点について、「『いいぞ』と言えば、選手は目の色が変わる。先生たちは、選手にもっとうまくなりたいという欲を出させてほしい。そうすれば『やらされる練習』ではなくなり、大人がいなくても伸びる」。 そのためには「指導者が選手の変化にきづく」ことが重要だと念押しした。「選手と一緒に動く、変化を見る、そして声をかけてあげてほしい」 今回は、沖縄尚学の比嘉公也監督も特別講師として招かれた。 高校時代は左腕として1999年春の甲子園、監督としては東浜巨(ソフトバンク)らを擁して2008年春の甲子園で優勝を経験した。小倉監督と同じようにキャッチボールを重視しているという。 いつも狙った場所に投げられるように「高い意識を持って」取り組むべきだと比嘉監督。外角低めへのコントロールを基準とし、「投手に必要なのは再現性と修正力。同じところに投げ、もし1球間違えてもすぐに修正する力を身につけてほしい」と語った。 甲子園塾では座学のほか、指導者の暴力撲滅に向けた討論なども行われた。(室田賢)
朝日新聞社