知らなかった…「日本兵1万人が行方不明」の硫黄島の土を掘るための「意外な道具」
なぜ日本兵1万人が消えたままなのか、硫黄島で何が起きていたのか。 民間人の上陸が原則禁止された硫黄島に4度上陸し、日米の機密文書も徹底調査したノンフィクション『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』が13刷ベストセラーとなっている。 【写真】日本兵1万人が行方不明、「硫黄島の驚きの光景…」 ふだん本を読まない人にも届き、「イッキ読みした」「熱意に胸打たれた」「泣いた」という読者の声も多く寄せられている。
米軍記録が頼りの捜索活動
「首なし兵士」が見つかった壕は「235I-2」と呼ばれていた。 なぜこんな無機的な番号や英文字の羅列が名称になっているのか。その理由は、米軍が硫黄島を砲爆撃するために戦時中に作製した「グリッド」用の地図を使っているためだった。グリッドとは、格子状に区分けされた各エリアに番号を付け、その番号を使って位置情報をやりとりする仕組みだ。 硫黄島のグリッド用地図は、縦横0.9キロメートルの正方形の43の大エリアに区分けされる。大エリアの番号は121から252まで。南から北にいくほど、番号は大きくなる。それぞれの大エリアには、さらに縦横0.2キロの正方形の小エリアが25区分けされ、AからYまでの25のアルファベットが付けられる。 つまり「235I-2」は、大エリア「235」内の小エリア「I」にある「2」と割り振られた壕、という意味になる。ちなみに「-」に続く番号は、現場が地上の場合1ケタで、地下壕の場合は3ケタ。この「235I-2」は地下に延びていない壕のため1ケタだったということだ。 ベテラン団員たちはこのグリッドが頭に入っていて、壕の名称を聞くだけで、大まかな位置を理解していた。僕も後にその域に達することになる。 グリッド用の地図を使用するのは、厚労省が近年「敵国側情報」に基づく遺骨捜索を始めたからだ。かつての遺骨収集は生還者の記憶に基づいて行われた。しかし、生還者の多くが他界した実情を受け、厚労省は米国側で保管された米軍記録に基づく調査に舵を切った。 米軍記録には日本側守備隊の陣地の位置がグリッドで示されているため、遺骨捜索もグリッドを活用するようになったということだった。旧敵国の軍隊に殺害された同胞の捜索なのに、もはや旧敵国側の情報に頼るしかない。「そのことを考えると複雑な気持ちになる」と、収集団に参加した遺児の一人はこぼしていた。