「便が緩いかな?」生後4ヶ月の息子に違和感 その後…医師「もう身体が反応しません」容体が急変した理由とは
命の危険と隣り合わせの投薬
しばらくして両親は「エクリズマブ(別名ソリリス)」というaHUSへの特効薬についての説明を受けます。エクリズマブは、国の許可がおりてから取り寄せ、投与するまで数日かかる特別な薬でした。 また、重篤な副作用があり、エクリズマブを投与することにより「髄膜炎菌感染症」を引き起こす可能性が、投与前の1000~2000倍に上がります。髄膜炎は治療が遅れると、その日のうちに死に至る可能性もある恐ろしい病です。 本来なら、髄膜炎の予防接種を受けた2週間後にエクリズマブを投与するのですが、このときのゆいとくんの容態は非常に悪く、予防接種を待ってはいられないため、抗生剤を平行投与しながらエクリズマブを使用することになりました。 副作用は恐ろしいけれど、やらなければ助かる見込みがない状態。 ゆいとくんの両親は「この薬の副作用で、死に至ることがあることを十分理解しました」と記された同意書にサインしなければなりませんでした。 エクリズマブを数回投与した所で、血液検査の結果が若干上向いたようでしたが、入院当初からの大量の薬剤投与に、ゆいとくんの肝臓が耐えきれなくなってしまい投与を中止。 もう使える薬も新たに出来る治療もないということで人工透析を24時間回し続けながら、輸血と血漿交換を繰り返し行い、ゆいとくん自身の力で這い上がって来るのを待ちました。
ゆいとくんの障がいについて
入院当初から容態が悪かったゆいとくんは、頭部のCTを取ることができていませんでした。人工透析が始まり、少しだけ容態が落ち着いたところで初めて撮ったCTは、脳の半分が真っ白だったといいます。 その部分は、身体中に出来た血栓が脳で詰まり、脳出血が起きていた場所でした。 脳出血のCT画像を見せられたときに「脳ダメージ、左脳出血、脳萎縮」について医師からはサラッと説明があった程度で、詳細は語られなかったといいます。 急性期が明けて命の危機が落ち着いた頃、医師から少しずつ説明がありました。 •左脳出血は右半身や言語に障がいが出ること。 •血液の状態が非常に悪い期間が続いたことと、ショック状態に陥ったことによる脳全体の脳ダメージはかなり大きいということ。 •長期鎮静による脳の萎縮がかなり進んでいること。 (結局4ヶ月近くICUに入り、鎮静剤で寝かされ、人工透析を回し続け輸血を繰り返しました) •それによりゆいとくんには重い障がいが残るだろうと予想されていること。 当初、医師がすべてを詳しく説明しなかったのは「きっと自分たちが病気や障がいについて受け止められる時期を考えてくれていたのだろう」と母親は話します。 医師はそれに付け加え「子どもの脳は力があり、予想もしない回復を見せることもある」「こればっかりは成長してみないとわかりません」と話しました。 ゆいとくんの未来に向けたこの言葉は、今でも医師から言われ続けているそうです。 最近になってカルテを取り寄せる機会があり、母親は初めてゆいとくんのカルテを見ました。 搬送された当日に【意識レベル最重度、今後なんらかの障がいが残ると予想される】と書いてあり「先生たちは最初からわかっていて、私たちに気を遣ってくださったんだなぁ」と涙が出たといいます。