〝復活劇〟の背景に何が、X上で告示前から広がった「印象」と「誤情報」 斎藤氏のピンチ、擁護のきっかけに?ポスト解析で実態が垣間見えた【データ・インサイト】
つまり「改革派の斎藤氏を県議やマスコミなど既得権益層がつぶそうとしている」という〝構図〟や「稲村氏は外国人参政権を進める」といった〝印象〟が、告示時点で「事実」として定着していた可能性があるということだ。 ▽知事選ポスト数は告示後に急伸 白鳥教授が述べた通り、知事選への関心は告示頃に高まったと言えそうだ。兵庫県知事選に言及したポスト数はその直前までは低調だった。8月23日以降の日本語ポスト数を見ると、斎藤氏が失職した9月30日などに1万件を超えたものの、その後10月27日までは最大8000件台で推移。5万件を超えたのは告示の10月31日だ。そして、その後は連日大量に投稿され、11月16日には約33万件に上った。 同様の傾向は斎藤氏関連のポスト数でも見て取れる。告示後こそ約38万件に上った日もあったが、10月の多くは比較的低調で、26日は約1万3000件まで落ち込んだ。 ポスト数が控えめだった時期に使用頻度が上位に来たワードを考えれば、関心の薄かった有権者らが情報をチェックし始めた告示頃には、すでに「印象」が方向付けられる環境が一定程度できていた可能性はあるだろう。 ▽効能の一方で、「公平な情報を知る権利」阻害も?
こうした分析をすること自体、「オールドメディアがSNSのあら探しをしている」と腹を立てる読者もいるかもしれないが、そうでないことは断っておきたい。 白鳥教授はこう述べている。「兵庫県知事選の投票率が上がったことはSNSの効能だ」。その通りだと思う。今回の投票率は55・65%。前回2021年より14%以上高い。2000年以降で50%を超えたのは01年、13年と今回の3回のみ。過去2回は参院選と同日で投票率が上がりやすかった。知事選だけだった今回、投票率が上がったのはSNSのおかげだろう。 また、斎藤氏が改革姿勢や実績、政策を評価されて得票を伸ばしたことも間違いない。有権者のそうした声も実際に耳にしたし、知事選の結果に何ら異論はない。 だが一方で、Xやユーチューブ動画などがつくった印象が有権者に影響を与えた可能性は否定できない。今回のX分析からは、その形成過程が垣間見える。
白鳥教授は、SNSで特定候補への過度な印象付けが行われると「有権者が『公平な情報を知る権利』を阻害しかねない」と警鐘を鳴らす。そしてこう指摘する。「SNS運営者側の対応や、情報リテラシーを高める主権者教育を検討する必要がある。選挙報道も見直すべきだ」 今回の知事選では、オールドメディアの影響力の低下をまざまざと見せつけられた。有権者に貢献できる報道とはどういうものなのか、「SNS選挙」時代の本格的な到来を機に、いま一度見つめ直したいと思う。