「鉄分が足りているか」を知るためにはココを見よ!血液検査で注目すべき「意外な項目」
貧血を治すのは大変
蛇足ですが、赤血球を顕微鏡で見ると、ほとんど無色透明で、なにを見ているのかすら分かりません。ヘモグロビンが赤いと言っても、ごくごくわずかに発色しているに過ぎません。しかしそんな赤血球が何十万、何百万個と集まれば、くっきりと赤く見えるのです。 貧血3項目が低いと、貧血の可能性が指摘されます。多くは無症状で、健康上の問題はありません。しかし重くなると顔色が悪くなる、息切れ、めまい、立ち眩み、頭痛などといった、低血圧とよく似た症状が出ます。そのため低血圧と貧血は混同されることが多いのですが、これらはまったく違う病気です。ただし女性では、両方持っているというひとも少なくありません。 貧血の大半は「鉄欠乏性貧血」と呼ばれるものです。鉄分の不足により、体内で作られるヘモグロビンの量が減って、結果的に貧血になるのです。とくに生理がある女性の3割が、これに該当すると言われています。 症状が重い場合は、病院に行くと「鉄剤」と呼ばれる、鉄分補給用の薬が処方されます。しかし副作用(はき気、便秘、下痢など)が強いため、ひとによっては長期的に飲み続けるのがかなり難しいそうです。レバーやカツオなど、鉄分の多い食品を摂ればある程度補給できますが、たくさん食べるのも大変です。鉄欠乏性貧血は、治そうと思うと結構大変です。手軽ですぐに効果が出るような対策は、ほとんどありません。
知名度の低い「赤血球恒数」
健診では赤血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビン量の3つから「赤血球恒数」と呼ばれる3項目も計算しています。 MCV(赤血球の大きさ) MCH(赤血球1個に含まれるヘモグロビン量) MCHC(赤血球の中のヘモグロビン濃度) 見たことのないような項目ですが、健診結果をよく見ると、これらの数値と基準範囲が書かれています。もしお手元に最近の健診結果があったら、確認してみてください。 MCV、MCH、MCHCがいずれも基準値より低いと、鉄欠乏性貧血の可能性が高いとされています。自分が鉄欠乏性貧血かどうかを確認するのにいいでしょう。 基準値はそれぞれ次のようになっています。 MCV(fL):85~102 MCH(pg):28~34 MCHC(%):30.2~35.1 またMCVが基準値より高いとビタミンB12欠乏性貧血かもしれません。これは血液の病気ではなく、胃炎が原因で起こる貧血です。胃炎で食物からのビタミンB12の吸収が悪くなると、貧血を起こしやすくなるのです。胃炎だけでなく、菜食主義者でもMCVが高く出ることがあります。 しかしこれら3項目を重視するお医者さんはあまりいないので、我々も気にしなくていいと思います。 『血を抜いて「心筋梗塞と脳梗塞を予防」…⁉ 赤血球数に隠された「恐ろしすぎる」病気の正体』へ続く
永田 宏(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授)