米国経済のスローダウンによって米国株式市場のけん引役が交代へ ~「クオリティ」がパフォーマンスを左右する~
これまで米国の強い消費は、コロナ禍に膨らんだ家計の余剰貯蓄が背景にありましたが、この余剰分は剥落してきています。また、AIの実用化を想定したIT投資の盛り上がりも設備投資をかさ上げしてきましたが、これも落ち着いてきています。
根強かったインフレについても、その内訳をみると、すでに物品価格や住宅価格の上昇は沈静化し、残るのはサービス価格です。ここは、人件費の高騰が尾を引いていて依然として高い伸び率になっています。この人件費の伸びが収まれば、インフレも正常化することになります。ひっ迫していた雇用状況ですが、求人倍率がようやく落ち着いてきて、人手不足を訴えていた企業の割合も徐々に低下してきています。失業率の推移などを今後も慎重に見ていく必要がありますが、インフレ率について、再び危険な水準に上昇するという恐れは小さくなっていると考えています。
Q3 市場では9月に利下げ開始という見方が強いですが?
私どものエコノミストチームも9月に0.25%の利下げを行い、年内にもう一回、0.25%の利下げを行うだろうという見方です。ただ、年内に2回の利下げを実施したとしても、依然として政策金利の水準は高いので、2025年にも利下げを継続するだろうとみています。現時点では、2025年には4回の利下げが実施されることを想定しています。
◆「利下げ」の下での株式市場は?
Q4 年後半から来年2025年に向けて利下げが続くという見通しであれば、米国の株式市場は引き続き堅調な状態が継続するのでしょうか?
株式市場の先行きを悲観させるような状況にはないのですが、これまでの株高によってバリュエーション(企業価値評価と株価の関係)は割高な水準になっていますので、その調整圧力を受けながらの相場になると考えています。インフレが落ち着く背景として経済成長の減速があるため、2024年1-6月のようなスピードで株式市場が上昇することは難しくなると思います。