米国経済のスローダウンによって米国株式市場のけん引役が交代へ ~「クオリティ」がパフォーマンスを左右する~
米国の実質GDPの伸び率は2023年がプラス2.5%でしたが、2024年はプラス1.5%に減速し、2025年はプラス1.8%へとやや上向くものの、2023年の水準には届かないという見通しです。この経済の減速と、利下げによる業績押し上げ効果をセットで考えていく必要があります。ただ、予想される経済減速はインフレ退治のためにFRBが意図したものであり、現時点で想定される程度の減速であれば、過度に悲観的になる必要はないといえます。 現在の株式市場は、ポジティブな材料で株価が上昇するより、ネガティブな材料によって株価が調整するということが、より起きやすくなっています。たとえば、決算発表で予想を上回る好決算を発表した企業の株価は平均的には上昇しているのですが、予想を下回る決算を発表した企業の株価の下落率は、好決算を発表した企業の株価の上昇率よりもその変化率が大きくなっています。マーケットではこれまでの株高でバリュエーションが割高な水準にあるということが認識されているため、ポジティブな材料よりもネガティブな材料に過敏に反応しやすくなっていると考えられます。
企業業績そのものは、2024年も2025年も10%を上回る程度の増益が見込まれています。株価が横ばいか緩やかな上昇程度にとどまれば、好調な企業業績によってEPS(1株当たり利益)が積み上がることによって、現時点の株価の割高感が正当化されることになります。今後は、企業業績を確認しながら、企業の実態に合った株価が意識されるようになっていくと思います。
◆米国市場のけん引役を担う「クオリティ」
Q5 今後の米国株式市場の物色の方向性は?
2023年に「マグニフィセント・セブン(M7)」と言われた大型ハイテク株7銘柄への集中投資が起こったのですが、2024年1-3月には分散化の傾向が強くなっていました。ところが、4-6月になって再び集中投資に戻りました。4-6月、「S&P500」は4.3%の上昇となったのですが、その4.1%に相当する部分はエヌビディアとアップルとアルファベットの3銘柄の上昇のみで説明できる状況でした。「M3」ともいえるような状態だったのです。3銘柄の時価総額は「S&P500」の16%程度の比率しかないので、その3銘柄だけで上昇分のほとんどが説明されてしまうというのは、異常な事態と言えます。