ボブ・ディランの名声はこの大傑作アルバムで確立した!『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』は60年以上たっても決して色褪せない【年始に聴きたい名盤】
大ヒット「風に吹かれて」が1曲目、悪声なのに人の心を撃つ魅力
アルバムは日本では、米フォークグループのピーター・ポール&マリーのヴァージョンでヒットした「風に吹かれて」(原題:Blowin’ In The Wind)で始まる。世界的に有名な、そして1960年代初期を代表するこのプロテスト・ソング(権力や社会への抗議のメッセージを含む歌)は、 1962年7月9日に録音された。ボブ・ディランはまだ21歳だった。 初めてこの曲を聴いた時、何という声だと13歳のぼくは思った。当時の音楽シーンでは、歌手は歌が巧く、声が良いのが当たり前だった。なのに悪声とも言えそうなこのヴォーカル。でも、この曲には人の心を撃つ魅力があった。
大のお気に入りは、「くよくよするなよ」
ザ・ビートルズ が全世界デビューして、世界の音楽シーンをひっくり返す前年に『フリーホイーリン・ボ ブ・ディラン」が発売されていた。それは本当にすごいことだった。後に評論家となって音楽の沼にはまればはまるほど、その思いはぼくの中では強まった。 「北国の少女」(原題: Girl From The North Country)、「戦争の親玉」(原題:Masters of War)、「はげしい雨が降る」( 原題:A Hard Rain’s A-Gonna Fall」など名曲が揃うこのアルバムの中で、ぼくの大のお気に入りは「くよくよするなよ」(原題:Don’t Think Twice, It’s All Right)だ。 この曲は1962年11月14日に録音されている。ディランはまだ21歳だった。恋をテーマにし たこの曲のハイライト部分は、"ぼくは心を捧げたけれど、彼女はぼくの魂を欲しがった "という一節だ。心は捧げられても魂までは愛する人にも与えられない。恋というものの奥深い秘密を21歳の若者がすでに知って、歌っている。究極の恋に対するニヒリズム。何と重い言葉だろう。 『フリーホイーリン・ボブ・ディラン」は 全米22位、全英No.1の大ヒットとなり、彼の名声はこのアルバムで確立された。62年前の作品なのに、その歌詞は21世紀の現代でも色あせていない。