関西人はサッカーでも"ノリ"が良い?INAC神戸越智氏が語る、関西人がサッカーに向いている説
|「よっしゃ、やったろう」の精神
「しなやかな心」というこの連載のテーマから考えると、ユニークさやノリの良さは重要です。ノリだけで勝てるわけではありませんが、最後のひと押しのスパイスになり得ます。大会でラッキーボーイが誕生したり、それが勝利への要素になったりするのは、「よっしゃ、やったろう」という気概や精神性があるからこそです。 関西には、強い相手に勝ったら目立つという感覚があります。そういった姿勢が、結果として、勝利につながっているのかもしれません。自分たちが劣っていることをマイナスには捉えません。むしろ、ジャイアントキリングを意識し、強い相手ほど燃える、「よっしゃ、やったろう」の精神があるのです。トーナメントでは勢いが重要で、それが関西チームの強みと言えるでしょう。 千葉県のある中堅高校の監督は、関西の選手を積極的に獲得していました。関西の選手にはやってやるぞというメンタリティーがあるので、全国レベルの強豪校に対しても、臆するところがありません。俺たちが倒してやるというマインドで入学してくるそうです。一方、関東の選手は、ある程度固定化されたヒエラルキーの中にいるため、下克上の意識が強くない傾向にあります。どうせ無理だろうという諦めの気持ちが先行しがちなので、既存の関係性にとらわれない関西出身選手たちの存在が重要とのことでした。加えて、関西の選手は、「俺たちのほうがうまかった」「あの崩しは完璧だった」と、負けてもそれを素直に認めない一面も持っています。 私は、現在、兵庫のINAC神戸レオネッサで働いていますが、兵庫は、大阪府に隣接することから、お笑いコンビ「ダウンタウン」の出身地である尼崎市や甲子園球場がある西宮市あたりまでは大阪マインドの影響を感じます。 近年の高校女子サッカー界においては、姫路市の日ノ本学園高校が強豪として知られています。ちなみに、1992年度から開催されている全日本高校女子サッカー選手権大会は、神戸市でスタートしたトーナメントです。かつて女子の日本リーグが盛り上がっていた時期には、TASAKIペルーレという強豪チームが神戸市に存在していました。女子サッカーに関して言うと、神戸はトラディショナルな面を持っているのです。 高校男子サッカーの世界では、岡崎慎司らを輩出した滝川第二高校が最も有名でしょうか。神戸弘陵高校のようなテクニカルなスタイルを志向するチームもあります。 日本は、東西に長く、地域性がサッカースタイルに影響している部分が多々見受けられます。そのようなことを考えながら、チームや選手の特徴を分析してみるのも面白いでしょう。「関西のノリ」という視点をふとしたときに思い出してみてください。新たな発見があるかもしれません。 【今月のポイント】 1. 関西人がサッカーに向いているという説がある 2. ユニークさやノリの良さは、最後のひと押しのスパイスに 3. 関西の選手は、負けを素直に認めない一面も持つ 越智健一郎(おち・けんいちろう) INAC神戸レオネッサアカデミー統括部長 1974年生まれ、愛知県出身。愛知県立瀬戸高校から日本体育大学へ進学。愛知県の高校で2年間講師を務めたあと、京都精華女子高校(現在の京都精華学園高校)へ赴任した。2006年にサッカー部を創部し、監督に就任。サッカーの楽しさと勝利を両立させ、12年度の全日本高校女子サッカー選手権大会で3位、14年度の全国高校総体で準優勝に導いた。個々の技術の高さと判断力をベースにした魅力的なサッカーは、女子高校サッカー界で異彩を放った。21年度も全日本高校女子選手権に出場。22年からINAC神戸レオネッサでアカデミー統括部長を務める
サッカークリニック編集部
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