関西人はサッカーでも"ノリ"が良い?INAC神戸越智氏が語る、関西人がサッカーに向いている説
|ユニークさで際立つ西日本勢
大阪人は、人と同じでは面白くないという気質を持ち、人と違うことをやりたがる傾向にあると言えます。自分のアンテナ、感度、取り入れているものを自慢げに語るところがあります。一般的には、良いものは隠したがると思うのですが、関西の人々は、それを自慢したがります。また、新しく採用したものについて、「俺はこんなのを使っている」「こんなことをやっている」と、積極的にアピールする傾向にあります。 サッカーの世界では、個性的なクラブチームが多く、ユニフォーム1つをとっても、独自性にこだわります。大阪の人々は自己主張が強いのですが、なぜか、それが、嫌味になりません。私は、大阪には空気を読む文化があると感じています。大阪の指導者たちは、自分の考えをしっかりと持ちつつも、敵をつくらないような表現方法を心がけているように思えます。 京都は、釜本邦茂さんや柱谷哲二さんなど、気迫あふれるプレーを持ち味とするレジェンドを輩出した土地です。最近は、久御山高校、京都橘高校、東山高校、私が指導していた女子の京都精華学園高校など、テクニカルなスタイルで結果を出すチームが増えたため、技術に優れている印象が強いと思われます。 しかし、大阪ほどスタイルを明確にするチームはなく、やや控えめな印象です。これは京都特有の奥ゆかしさの文化。すべてを表に出すことを美徳としない風潮が、影響しているのかもしれません。 京都の文化には、曖昧さやルーズさが存在しますが、表と裏がある側面を持ちます。例えば、「いい服を着ていますね」とほめられたとしても、「その服は派手ですよ」と批判されているように受け取る場合がありますし、実際に皮肉を込めてそう言っていたりします。京都特有の婉曲的な表現があるのです。 京都は、上品さを重視する傾向にあり、かつての都であった歴史から、東京に近い雰囲気が感じられたりもします。プライドを内に秘め、サッカーにおいて、それを前面に押し出すことはありません。大阪の影響を受けているものの、そこまで極端にはやらない立ち位置なのかもしれません。 関西には、大阪、京都、兵庫が上で、滋賀、奈良、和歌山は下という位置づけがあります。その中において、滋賀は、自己主張が強く、うまく生き抜くための目鼻が利く感覚があります。 滋賀のサッカー文化には、野洲高校が大きな影響をおよぼしています。近年は近江高校の躍進が目覚ましく、昨年度の全国高校サッカー選手権大会では、準優勝に輝きました。前田高孝監督の独特な指導法や「パイレーツ軍団」としての話題性は戦略的であり、選手のモチベーションを高めるツールだったように思います。メディアの活用がうまく、インタビューなどでも注目を集めました。 今年度の全国高校野球選手権大会では、滋賀学園高校の応援団によるダンスが、大きな話題となりました。彼らには選手よりも目立ってやろうというポジティブなマインドがあり、その勢いが選手との一体感を醸成しました。応援席が注目されると、プレーする選手にとって、良い意味でのプレッシャーになるでしょう。それと同時に、大きなあと押しになったに違いありません。みんなで盛り上がる姿勢は、非常に関西的だと言えるでしょう。 高校野球の話で言うと、昨年度の全国高校野球選手権大会では、慶應義塾高校(神奈川県)が優勝しました。関東では、彼らのような文武両道が、真面目で王道的なアプローチ、伝統的なアプローチによって、注目されますが、ユニークさでは西日本勢が際立っているのではないでしょうか。
【関連記事】
- 【サッカー】大阪屈指のチームが行なっている「2人組で崩す判断」、「トライアングルの動き」とは?強豪、履正社高校を率いる知将が示す局面打開の状況判断#3~5
- 【サッカー】高い位置からのプレスの攻略と、そこからサイドに起点を作る際の注意点とは?大阪の強豪、履正社高校を率いる知将が示す局面打開の状況判断#1,2
- 【サッカー】サッカーにおける状況判断の重要性 森保ジャパンのアタック陣から見る、優れた判断の土台となる技術
- 【サッカー】サッカーにおける状況判断の重要性 バレージ、ストイコビッチらの判断と技術が光ったシーンを語る
- 【サッカー】サッカーにおける状況判断の重要性 状況判断に優れたフットボーラーの共通点とは