「現在バイアス」を乗り越えろ!未来の自分を救う「コミットメント」の力
明日の玄米や運動より今日のケーキやリラックスがいいし、老後のための貯金よりいま手元にあるお金を使いたい。気候変動のようなグローバルな課題への取り組みがなかなか進まないのは、コストだけが先行し、その恩恵はずっと先の未来でしか得られないからだ。言うなれば、アイスやビールを好む現在の自分と、デザートを我慢し炭酸水を飲む、模範的な選好を持つ未来の自分がいるようなものだ。 問題は、どこかの時点で未来の自分は現在の自分になる、ということであり、まさにここが3人の共同研究の優れたポイントであった。彼らは、現在の自分に未来の自分を想像させ、前もって特定の意思決定をさせることによって、時間的なハードルを乗り越えられることを示した。これこそがコミットメントデバイスだ。 つまりこれは、未来の世界で意思決定を行うのはその時点の現在の自分であることを踏まえて、現在の自分が、未来の自分に正しい道を選ばせるために行う誓いに他ならないのだ。 ● コミットメントを決めることが 目標達成の第1歩になる ローリーのように定期的にジムに通う自信がないとか、語学のレッスンを続けられそうにない(未来の自分は動詞の活用を覚えるよりもパブに飲みに行くほうを選ぶかもしれない)という人は、自分自身にコミットメントを課すとよい。コミットメント(ジムに行く、語学のレッスンを受ける等)を決めることこそが重要な第1歩であることを押さえておこう。
決め方としては、最終的な目標(マラソンを4時間以内で完走すること)にコミットしてもよいし、その目標を達成するうえでもっともハードルが高いと感じているステップ(週3回ジョギングに行くこと)にコミットしてもいいだろう。 さらに、このコミットメントを、自分自身へのペナルティや報酬と連動させると一層効果的だ。こうすると、挫折したらそのことがはっきりわかるため、コミットメントに拘束力を持たせるには最強の方法だ。 これらをすべて実践すると、自ら立てた誓いを守らねばと強く思うようになり、コミットメントを破ることに抵抗感を覚えるようになるだろう。この切迫感こそが、挫折を未然に防ぐのに役立っているのだ。 コミットメントデバイスを用いてストレッチ目標の達成を促す事例のひとつに、貯蓄に関するものがある。これらのテクニックをすべて取り入れているという点で注目に値する。 約700人の被験者を対象に、通常の預金口座か、自ら設定した額に達するまで引き出せないコミットメント預金口座のいずれかを開設する選択肢を与える。貯蓄者は目標を、まとまった額のお金が必要な時期(クリスマスシーズンや新学期等)に合わせてもよいし、特定の金額を設定してもよい。