「現在バイアス」を乗り越えろ!未来の自分を救う「コミットメント」の力
人は将来の大きな利益よりも、目の前の小さな快楽を優先してしまいがち……。日々の誘惑に打ち勝つには、「コミットメントデバイス」という手法が有効だ。それはつまり、目標達成のために未来の自分の行動を事前に決断すること。貯金やダイエットなどを例に、具体的なメソッドを見て行こう。※本稿は、オウェイン・サービス著、ローリー・ギャラガー著、国枝成美訳『根性論や意志力に頼らない 行動科学が教える 目標達成のルール』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 教養映画を観たいと思っていても 娯楽映画を選んでしまう心理 想像してみよう。今日は水曜日の夜だ。ハードな1日を終えて帰宅したが、冷蔵庫にはたいした食材がない。それなら、何かテイクアウトして映画でも観ながらくつろごうと考える。ピザを頼みテレビをつけるが、ここで何を観るかの選択を迫られる。 一方の選択肢は、おもしろいが俗っぽい映画――『ピッチ・パーフェクト』[訳注:2012年公開のアメリカのミュージカルコメディ映画]や『バットマンvsスーパーマン』[訳注:2016年公開のアメリカの実写映画]の類で、その場かぎりの娯楽性を重視した作品だ。 もう一方の選択肢は、まったく異なるタイプの映画、すなわち、もっと教養度の高い作品――『それでも夜は明ける』[訳注:2013年公開のイギリス・アメリカ合作の歴史ドラマ映画]や『リンカーン』[訳注:2012年公開のアメリカの伝記ドラマ映画]の類だ。純然たる娯楽作品とは言いがたいが、どちらも前から観たいと思っていた作品で、『ピッチ・パーフェクト』からは得られないおもしろさがあるにちがいないと思っている。 ハードな1日の終わりにこの選択を迫られたあなたはどちらを選ぶだろう?娯楽映画か教養映画か?
いつも教養映画を観ようと思っているのに、いざとなると娯楽映画のほうを選択してしまう――あなたも行動科学者のダニエル・リードやジョージ・ローウェンスタイン、共同研究者のショバナ・カリアナラマンと同じように、こんな経験があるのではないだろうか。 一般に教養映画は、ずっと観ようと思っていた、あるいは、もっと前に観ておくべきだった(そして、観終わったときに観たことを後悔しないであろう)作品であるのに対し、娯楽映画は「おもしろいがすぐに忘れ去られてしまう作品」だ。 研究グループがこの教養映画現象を議論しはじめた当初、彼らの仲間うちでは『シンドラーのリスト』[訳注:1993年公開のアメリカの歴史映画。第二次世界大戦中、多くのユダヤ人を虐殺から救った実在のドイツ人実業家を描いた作品]を観ようと思っていたのに、実際に観るまでに何週間もかかった人が多く、結局まったく観なかった人も多数いたと述べている。 ● 未来の選択をいますることで 自分の意図に沿った行動ができる 優れた行動科学者の例に漏れず、リード、ローウェンスタイン、カリアナラマンも、この深い洞察に富んだ観察結果のみ示して終わり、とはしなかった。彼らは、人がさまざまな意思決定を迫られたとき、この現象がどのような結果を生むかを調べる実験を考えた。