ホンダはマジメだった 800万円超の新型CR-Vに迫る
ホンダの新型「CR-V e:FCEV」に、大谷達也が早速、公道で乗った! 【写真を見る】新型CR-V e:FCEVの全貌(18枚)
トップクラスの静粛性
ホンダの新しい燃料電池自動車「CR-V e:FCEV」に試乗した。 FCEVはFuel Cell Electric Vehicleの頭文字で、つまりは燃料電池自動車のことを指す。 燃料電池と聞くと、リチウムイオンバッテリーのように電気を充電しておく充電池と誤解しそうだが、燃料電池は水素と酸素を元にして電気を生み出す発電機として捉えたほうがわかりやすい。 水に電気エネルギーを加えると、水素と酸素に分解できることを化学の授業などで習ったとおり。反対に、水素と酸素を化合させて水を作り出すと、それと同時に電気エネルギーが得られる。これが燃料電池の原理。したがって燃料は水素と(大気中の)酸素だけ。しかも、電気エネルギー以外に排出されるのは水だけという、きわめてクリーンなエネルギー源だ。 そんな、今の時代にぴったりなはずのFCEVの普及はなかなか進まず、現在、日本で買えるのはトヨタ「ミライ」とトヨタ「クラウン(セダン)」、そしてヒョンデ「ネッソ」の3モデルくらいしかない。しかも、値段がいずれも¥7,000,000~¥8,000,000と高価なことも、街でFCEVを見かける機会が少ない理由のひとつだろう。 じゃあ、なぜホンダはそんなFCEVをわざわざ作ることになったのか? という話題は後述するとして、まずは新型CR-V e:FCEVに乗り込むことにしたい。 先ほど燃料電池は発電機だと記した。したがってFCEVは燃料電池が生み出した電力でモーターを駆動して走行する。だから、乗った印象は、おおむねバッテリー式電気自動車(BEV)と変わらない。音は静かだし、動き出しは滑らか。CR-V e:FCEVもまったく同じで、車内は恐ろしく静かだし、振動もほとんど感じない。ギヤチェンジしないから加速が滑らかなところも魅力のひとつだろう。 ただし、エンジン車に比べれば静かなFCEVも、BEVに比べると騒音面で不利な点がある。 燃料電池はその原理ゆえ、加速時などには大量の酸素を大気中から取り込まなければいけない。これに用いるコンプレッサーが、まるでターボチャージャーのようなうなり音を上げるFCEVがこれまでは少なくなかった。ただし、CR-V e:FCEVは特殊な技術を使ってコンプレッサーの騒音を低減。そのほかのノイズも発生源から徹底的に潰すことにより、私がこれまで体験したFCEVのなかではトップクラスの静粛性を実現していた。 正直にいうと、私にはCR-V e:FCEVが発する“ピー”という高周波音がかすかに聞こえていたけれど、ホンダの技術者によるとこの高周波音が聞こえる人はごく希だそうだ。ちなみに、このノイズは音量自体もごく小さいので、私自身もあまり気にならなかったことを付け加えておく。