ホンダはマジメだった 800万円超の新型CR-Vに迫る
プラグイン・ハイブリッドシステムならではの美点
もうひとつ、FCEVの弱点といえるのがパワー不足で、ホンダがかつて販売した「クラリティFUELL CELL」も、出だしは悪くないけれど、そこからの車速の伸びがあまり感じられなかった。ちなみにクラリティFUELL CELLの燃料電池は最高出力が140psという性能。これでは1890kgの車重を力強く走らせるのに不十分というものだろう。 実は、CR-V e:FCEVの燃料電池も最高出力は125psと決して大きくない。けれども、ここに130psを超える出力のバッテリー(実際の出力は充電量によって変化)を組み合わせることにより、最高出力177psのモーターをフルに駆動するのに十分な電力を得ているのだ。このためCR-V e:FCEVは発進だけでなく、その後の車速の伸びも力強く、余裕をもって追い越し加速できる動力性能を手に入れたのである。 なぜ、CR-V e:FCEVがこれほどパワフルなバッテリーを備えているからかといえば、そのパワートレインがプラグインハイブリッドとされているから。もっとも、通常のプラグインハイブリッド車(PHEV)はエンジンとモーターというふたつの動力源が必要になるが、FCEVのPHEVはエンジンが不要なため、PHEV化に伴う重量増を最小限に抑えられる。 しかも、バッテリーが17.7kWhと大容量なため、60kmを超えるEV走行が可能。したがって、かりに自宅から水素ステーションまでが多少離れていても、自宅でバッテリーを充電してから出かければ、たとえ水素タンクがほぼ空でも水素ステーションまでたどり着けるのだ。 つまり、CR-V e:FCEVはプラグイン・ハイブリッドシステムを搭載することで、動力性能やドライバビリティの向上に加え、水素が減っていても走行できるという使い勝手のよさまで手に入れたのである。 そして、これは最近のホンダ車に共通した美点だけれど、乗り心地がしなやかなのにハンドリングが正確で、コーナリングの楽しさを満喫できる足回りに仕上がっていることも特筆すべき。運転したときに感じるクォリティ感でいえば、ドイツ車を始めとする多くのヨーロッパ勢を凌ぐくらい、CR-V e:FCEVは完成度が高いと評価できる。